みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

2016.3.10力への手紙~父編

1/2成人式で読む手紙を書くために、
夫は私のブログをひもといたらしい。
そして、たびたび号泣したと言っていた。
相変わらずよく泣く男だ。
泣きながら書いて、書きながら泣いて、を繰り返して、
私よりも早く書き終えていたようだ。
娘たちは、
「お父さん、手紙読むとき泣くよね、動画撮ってきてー。」
と、能天気な野次馬根性で茶化していたが、
私も同感で手ぐすねを引いていた。
で、当日持ってきた手紙が、もう長いったらなんの。
便せん一枚の割り当てなのに、
ワードで自筆でないことをいいことに?
A4版で4枚分も持ってきてバサバサと繰りながら読んでいた。
案の定、ずっと泣いてましたね。
あとから夫の言い訳として、
Sくんとこのお母さんの手紙で、やられた。
うちが先なら絶対泣かん自信があった、
らしい。後からならなんとでも言える。
(ちなみに、私もSくんの番で涙出そうになった)
が、娘のリクエストの動画は撮れなかった。
式ですもの。当然おもしろ半分不可です。
あと疑問は、夫の手紙は全部話し言葉なこと。
なんで手紙を話し言葉にしたんだろう?不明。
まあ、何にせよ、力への気持ちは伝わりますけどね。
力、1/2成人式、おめでとう!!
力へ。1/2成人式おめでとう。式予定日の2月24日。10年前のこの日に何があったのか、お母さんのブログで調べてみました。日本時間のこの日早朝、荒川選手が金メダルを取りました(たぶん)。お母さんは病院の規則で禁止されてたけど、隠れて病室でテレビ中継を見たと言ってたね。お父さんは、お姉ちゃん2人を保育園に送っていく前に、家で見てたような気がする。力は緊急入院して10日目だったのかな。逆流の検査をして、鼻に入ってたエアウエイを取ったと書いてありました。胃ろうの手術をした方がいいでしょうね、ということになってたけど、どうやら、そのころはまだ、お父さんもお母さんも、手術を受けさせるのに覚悟を決めてなかったみたい。【きょうは3月9日。10年前のこの日は、2人のお姉ちゃんがほぼインフルエンザから復活。力はもう入院してて、初めての手術目前でした。病明けの春は「おかあさん、私ね、大人になったら男の子は、ちからにする!」と文章は成り立っていないけど、気持ちのある言葉を宣言した日だったみたい】
あれから何度、力が死ぬかもと思って泣いたことか。手術10回もして、そのたびに頑張って帰ってきてくれた。月並みかもしらんけど、帰ってきてくれて、きょうまで元気でいてくれて、ありがとう。この手紙を、きょうは力の前で読む、ということやし、泣いたら力に失礼やし、頑張って泣かんで、きちんとこの10年のことを力に伝えんといかんと思う。
障害がいくつもある上に、1歳にもならんうちから、手術何回もせないかん。原因は分からんけど、ずっと申し訳ないなあと思ってた。入院中に付き添ってたある夜、看護師さんに「どうして力は(いろんなものを背負って)生まれて来たんでしょう」と聞いたことがある。看護師さんはそれに直接答えてはくれなかったけど、「お父さん、力くんをできるだけ、笑わせてあげてね」と言われた。
力はそのころ、確かにほとんど笑ってなかった。今考えれば、ミルクを飲めば吐き気は止まらんは、呼吸は苦しいは、耳は聞こえんは、手術したけど実はおなかの中がめちゃくちゃやった、とか、とても笑えるはずがない。でも、人間は、そんな苦痛がなくなったら、自然と笑えるんよね。笑うってことは、苦しみがないし、気持ちがいいし、人間が「生きてて良かった」と幸せを感じている時。そうやな、とそのヤマモトさんというベテラン看護師さんの言葉がスッと入ってきた。
それから、力に笑ってもらうことが、目標やったような気がする。ま、特に何をしたわけじゃんないかもしれんけど。お父さんはほとんど何もしてないってお母さんは言うやろう。5年間も家におらんかったし。でも、力が具合が悪いと聞けば寝られんやったし、笑うたびに、うれしくなった。いつの間にか「ゲラ夫」になって、機嫌良い時は一日中笑ってて。ほんと、良かったなあとつくづく思う。この10年は、力に「ありがとう」ばっかりやった。
次、成人式までの目標は何にしようかな。目でだけじゃなく、会話できるようになったらいいね。お父さんも相変わらず力のことをネタにコラムを書いてるだけやけど、力が堂々と胸を張って、家の外でも過ごせるよう、新聞記者としてできることは頑張っていかないかんなあと思ってます。力に負けんように。いつか、みんなが別に頑張らんでも、笑って暮らせる世の中になればいいね。お父さんとお母さん、お姉ちゃんたちをこれからもずーっとよろしく。
2016年3月9日 とうちゃんより