みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

チェック、ダブルチェック

「チェック・ダブルチェック」

これは、映画、クライマーズ・ハイの、主役のセリフ。
役柄は、御巣鷹山の飛行機墜落事故を総括している新聞記者なのだが、
この言葉は、映画の中で重要な意味を持つ。


このごろ、力以外のことでのもろもろが増えて、
記事更新をタイムリーにできていないのだが、
このタイムリーでないことは、非常に粗忽な私にとっては、考える時間となり、いいこともある。(という言い訳)

半年ほど前に、ヘルパーさんなどへの申し送りの難しさのことを書いたのだが、
また最近、似たようなエピソードがあり、少々へこんでいた。

力は、体調が数年前と比べると格段に向上し、
看護師さんやヘルパーさんにお願いする際も、こちらも、結構ラフな状態でいる。
それでも、これは、というような良くないことも全く起こってはいないので、ありがたいことなのだが、
年度末位からだか、
景気が良くなってきたらしいムードなのか、(個人的には実感はないが)
はたまた、ちょうどうちがそんな時期にたまたまぶち当たっているのか、
力を担当してくださっているヘルパーさんや看護師さんが、
退職されたり、異動されたり、めでたいことがあったりで、立て続けに変わっていた。

変わり目は、こちらも当然、うまく引き継がれるよう、心してはいるのだが、
なにしろ、力は結構安定している。
こちらも慣れてきたというべきか、緩んできたというべきか。

加えて、この時期、ちょうど気管切開部分に関して、閉鎖への道に本格的に乗りかかった時期でもあった。
私がみている時はできるだけ気道内からの吸引をせずに、口鼻から排痰を一生懸命練習させていた頃。

学校は、担任の先生は一人持ち上がってくれていたし、
看護師さんは変わらなかったので、
ある程度、いつも通りの年度末年度初の緊張感でいた。

ヘルパーさんに関しては、
新しい方が来られた時は必ず、医療行為関連については、
確認させてもらうことにしているし、確認はしていた。
半年前には、これに吸入手技の確認が抜け落ちていて、
ちょっとごたごたしたので、吸引、吸入、注入、という3つのことに関しては、
お互い確認していたところ。

が、
新しく担当してくださっている看護師さんの、
吸引手技の確認が、うまくいってなかったことが、偶然判明したのだ。

これも、
力が気管切開の閉鎖過程にあること、
力が結構調子が悪くなく、分泌物も少なく、吸引自体をしなくていい日がほとんどだったこと、
が、主要な表立った理由だ。

看護師さんに後から尋ねたところ、
これらの理由に加え、医療従事者同士の、できるだろう、的な暗黙の了解のところで、
わざわざ、練習として、不要な吸引手技をすることが、力にとっては負担になるだろうという、
善意のうちに、スルーされてしまった、ということだった。

そして、それは私の方も、
医療プロの看護師さんたちに、わざわざ手技を確認させてもらうのは失礼だ、
とか、
もちろん当然やってくれてるのだろう、
という、まさに、思い込みの、確認不足からきたことだ。

力の気管切開部分に装着されているTチューブとシリコン蓋は、
カニューレと比べれば、一般的ではないだろうし、
また、気管切開の閉鎖過程にある状態も、一般的とは言えない。
だいたい同じは、全く同じ、とは全く違うのだ。

慣れとは怖い。

看護師さんたちも、こちらの指摘を受け、しっかり対応してくださったし、
同系列の社のヘルパーさんも、担当さんがとてもしっかりしていて、
様々気を遣っていただいたり、
これからの改善の策を、すぐに立ててくださって、よかったのだが、
何年かのちに予想されている、介護者不足問題や、自分たちの老化、力の成長などを考えると、
とても不安な気持ちになって、へこんでしまった。

申し送りの難しさは、半年前ももそうだったが、改めて、思い知らされた。

申し送りの抜け項目がないように、また、手間を省くために、
力のお世話のあらましを何ページかにまとめて、
ほぼ毎年更新している自己流のサポートブックがあるのだが、
これはこれで、一定の効果はあっても、
結局は、その一時のデータでしかない。
そして、これがあることで、引き継げているような気になるのは、意外な弊害だと認識した。

似たようなことに、マニュアル作りも、そうだ。
手順をどれだけ作り込んでも、絶対に完全にはならない。
完全にしようとして、マニュアルが分厚くなればなるほど、使う人に響かなくなる。
単なる作り手側の証拠づくりみたいなものになりかねない。

じゃあどうすればいいか。
やっぱり、地道に、都度確認するしかないのかもしれない。
手間がかかることを厭うと、それだけのしっぺ返しが来るかもしれないのだ。

どれだけ確認しても、ミスがゼロには絶対にならない。
それでも、めげずに、やるしかない。
暗黙の了解も、アイコンタクトも、
わかってくれてるよね、も、思い込みだと肝に銘じ、
チェック、ダブルチェックすること