みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

人はそんなに強くはない、人はそんなに弱くはない

iPS細胞を開発した山中氏がノーベル賞を受賞した。50歳!
先週末、iPS細胞から卵子~、というニュースを読んだばかりだったので、
ちょうど家族で夕食の食卓を囲んでいる時の速報テレビニュースに、おおすげー、と、声を上げた。
だって、自分たちとそんなに変わらない年齢だもの。本当にうれしく明るいニュースである。
 
 
iPS細胞について、詳細に知っているわけではないが、再生医療に大きく貢献することは理解できる。
とすると、やっぱり、力のことに関連付けて考えないわけにはいかない。
 
力は0歳時に、小腸の2/3を切除された。その際の外科医からの話。
曰く、
「小腸はいわゆる不思議な臓器であり、現時点で移植などが不可能なので、切除したらそのままなのだが、
昨今の医学の進歩はすさまじく、きっといつの日か、小腸が再生可能な時代は来ると思う。」
ざっくり言えばこんな内容の話を、切除手術のずいぶん後に、病室で世間話のように伺ったことを思い出す。
 
7年前のことだ。そして、その1年後に、iPS細胞についての論文が発表されている。
 
もちろん、iPS細胞が開発されても、再生医療にどんな道筋がついて行くかは、まだ未知数。
一足飛びに、さあ、再生できるよ!ではないのだから、
期待しつつ、長い目で、関心を持って、見守っていられる状態になった、という時点。
 
 
話変わって、新型出生前診断
これも、iPS細胞に匹敵するくらいの、かなり劇的なトピックスだと、個人的には感じるのだ。
妊娠して初期の段階で、胎児の異常(ダウン症)がほぼ100%に近い確率で判別できると言う。
 
このトピに関しては、うちで夫と、よく話すのだ。
 
もし、自分たちならどうしただろう?
 
診断方法があるのに、トライせずにいられるのか。
診断を受けて、障害があると判定された時にどう考えるのか。
障害がある子を産む選択が、できるのか。
 
力を授かった今と、力を授かっていなかった場合では、かなり考え方が異なるだろうと、いうのはわかる。
が、やっぱり答えは出らんなあ、と。
 
医療技術や研究がどんどん進み、数年前では考えられなかったことが可能になっている。
山中氏のノーベル賞をきっかけに、生命医学に関する倫理面の議論はもちろんのこと、
実生活での医療、福祉体制の整備など、
時代錯誤と言ってもいいくらいなのに、まだ後回しにされている様々なことについて少しでも、
科学進歩に追いつく努力をしてほしい。
早く挽回しないと、多くの人が、これ、という場面に直面して困惑し、
後々後悔しないような納得できる判断をつけにくくなることになりかねない。
人はそんなに強くはない、から。
 
しかし。
重度、と位置づけられる障害がある力を授かり、
今まで、まだ数年だが、力と一緒に過ごしてきた、いわゆる当事者の私たちは、
それはそれは、各人心身ともに、いろんなしんどい山をたくさん経たが、
ありがたいことに、力は力のレベルでなかなかいい感じで成長し、
私たちも大崩れすることなく、周りから見れば、普通、とは見なされないとしても、
自分たちとしては「普通」に過ごせている。
今となっては、力がいなかった私たちよりも、
現在の、力を軸に回る毎日を過ごす方が、ずっと幸せではないかとよく思う。
これも、たくさんの人たちが助けてくれたから。
どうしようもないくらいシビアなことでも、必ずなんとかなるものなのだ。
人はそんなに弱くはないのだ、とも思う。
 
いろんな進歩は、とても喜ばしい。
でも、
いろんな進歩は、ちょっと恐ろしい。