みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

東京千葉4泊5日の旅(初フライト編)

考えられる限りの準備をして、当日。
おねえたちは給食まで学校、じいちゃんばあちゃんが昼頃、車で送ってくれるためにやってきた。

力は朝少し起きただけで、ずーっと寝ている。多分、今からのいろいろに逃避モードなのだろうが、
準備で随分労力を要した私が、2,3日前から珍しく怖い夢など見たりして、かなり緊張度が高かったため、
それが力に伝わったのだと思う。
また、台風の影響なのか、前日からねむねむモード、やや吸引時の痰の粘調も気になるといえばいえる。
こちらは晴れて飛行機飛ばないという状況ではないが、予定日程の前半、行き先は天気はあまり良くない模様。
おねえたちの早退を迎えに行き、準備をして出発。余裕を持っているつもりが、ギリギリになった。
 
イメージ 2空港までの道はやや渋滞気味だったが、
チェックインの時間には間に合った。
チェックインは椅子がある、
「スマイルサポートカウンター」なるもので、
荷物預けも含めて、全てお願いできた。
 
預ける荷物は、黒スーツケース、おまるバッグ、
衣類のリュック(紫)。
 
機内持ち込みは、吸引器、注入セット入リュック、
貴重品バッグ、友人へのお土産(魚塩干)だ。
 
イメージ 3検査場付近に行くと,
激混みである。
 
少しぶらぶらしようか、
とじいちゃんばあちゃんと話していたが、
係員の方が、
私たちをみてすぐに、
別の入口から
案内してくれたので、
二人とは
あっけなくバイバイした。
 
 
 
 
 
 
 
 
検査場では、2人の女性のスタッフが付きっきりで進めてくれた。
持ち込みの医療機器ほかがたくさんだからか、何度もアラームが鳴り、何度もゲートをくぐった。
バッグの中のものも、ほとんど全部出して提示した。
 
通過すると、搭乗口では、一番に案内してくれるという。既に、おねえたちはぐったりし、力もややぼんやり。
大丈夫か?乗れるのか?おいおい。
 
搭乗時も、スタッフがついてくれて荷物を持ってくれ、
機内では、客室乗務員が数人、よってたかって、という感じで荷物を運んでくれたり声掛けしてくれたり。
まるで王様のようだった。
 
機内入口までバギーに乗って移動できたが、それからはバギーは荷物として預けることになる。
力王様を、座席に移動するため抱っこをしたら、ばっちりしっこが漏れており、すぐに着替えをした。
機内のトイレのおむつ替え場所は、力には小さすぎて大変不便だった。これはだめよねー。
 
イメージ 1力の座席は窓際にチャイルドシートだ。
チャイルドシートは窓際のみ使用可。
緊急時に他の乗客の邪魔になるから。
シートはカーシートとほとんど同様の仕様。
離着陸時は垂直に近い状態になるので、
力にとってはしんどいだろうが、
まあ15分くらいのもんだから、どうにかなるだろう。
乗ると、ぴったりだったし、力も嫌な感じではない。
 
 
私たちは横に並んで座った。おねえたち窓際ではなかったが、しょうがない。
続々と乗客が乗ってきて、あれよあれよという間に満席に近い状態になった。こりゃーちょっと窮屈やなあ。
客室乗務員が、「羽田からはとても揺れたので、この便も揺れる可能性が大きいです。」と怖いことを言う。
私も10年来ぶり、子どもたちは全員初フライトだ。しかも、満員。なんだか条件は今一つである。
 
少し遅れて発進した。私の緊張度と言ったら!子どもたちと一緒なら死んでもしょうがないとあきらめられる。。
などと、究極なことを考えるほど。飛行機に乗ってこんなことを考えたのは初めてだ。
力の状態をずっと観察していた。タオルをちゅうちゅうしたままなので、やっぱり不安なんだろう。
離陸際の重力は大丈夫か?と力を見ていると、離陸時の一番強烈な時ににやあ、と笑み。これはいいんだわ。
安定してから少し痰吸引はしたが、上空では眠ってしまった。
顔色は悪くないが、快ではない、という感じ。
 
客室乗務員が「揺れるかも」と言っていたのは案の定あたりで、かなり揺れがひどい。
ベルトサインはほとんど消えなかった。
力は垂直座位のままだ。条件悪いなあ。
 
前のモニターに、現在位置が何度か映し出されていたが、全くこんな時は進みがのろくてのろくて。
え、まだ松山上空なの?などと、思いつつ。
窓外の景色を見ながら、などとは、ほとんど思えないほど余裕がなかった。
短時間の安定飛行の後は、あっという間に着陸態勢に入った。
力はそのころにぼんやり目を覚ましたが、いきなり、げほげほとせき込み始めた。
既に、ベルトサインは出ており、電子機器は使用しないでください、とアナウンスがあったばかり。
 
げげげげ、どうしよう?15分くらい、持つかな?どうしようどうしよう、とあわあわし始めた私。
再度げほげほと、咳き込む力。スピーチバルブをとった。あーこりゃいかん、吸引せな持たんぞ。
 
急いでバッグ底に入れておいた手動吸引器を取り出した。
いつも緊急用としてアンビューバッグの箱の中に入れているだけで、実際に使ってみたのは練習の一度きり。
ばたばたとセットして、とりあえず、噴出したのだけでも吸引しよう。
・・・・。あわてているため、吸引できず。あら、これどうやって使うんやったっけ?
そうこうしているうちに、まだ咳き込む力。うわーどうしよう、どうしよう、冷たい汗が。。。
と、吸引できた。あーそうやった、簡単な操作だったのだ。考えすぎ。全く平常心ではない。
吸引すると、落ち着いた。咳き込みもなくなった。寝起きで一気に出てきたのだろう。
しばらくして、無事に着陸した。やったー、やっと地上だ。どうにかなる、これで。
 
イメージ 6
往路の着陸時は、静かな闘いの時間であった。
無事に到着して本当に本当によかった。
乗る前にずーっと寝ていたのが、
ネックだったのだと思う。
もともと寝起きはどうしても痰が多い。
また初フライト、という緊張感で、
力の普段状態からも精神的に程遠かったのだろう。
台風の影響もあったのかもしれない。
満員で窮屈だったのかもしれない。
要素としては、ほとんどいいことはなかった。
頑張って乗れた、のだと思う。
 
いいことは、呼吸状態は安定していたこと。
手足や体に無駄な力も全然入っておらず、
脱力系だったことだ。
これでけいれんなど起こしたら、
本当に大変だったと思う。ああーよかった。
 
客室乗務員からは、子どもたち全員に初フライトのメッセージをいただいた。
なお、ピンクのタグは、機内入口までバギーに乗っていっていいですよ、というもの。
 
 
到着した日から2日ほどは、今一つな体調で過ごした力だったので、
帰りの飛行機は乗れるのだろうか?しかも、最終日はディズニーランドやし、と、
ディズニーランド、やめるかどうするか、というほどだったが、体調は天気と共に安定してきて当初予定通り。
とりあえず飛行機で帰宅、となった。
ただ、行きはチャイルドシートだったが、もしできることなら、ストレッチャーに寝かせて乗れるか尋ねることに。
 
羽田でもスマイルサポートカウンターでの対応。
車いすの方や、ベビー連れの方も同じく、このカウンターで手続きをしており、少し順番待ちした。
 
羽田での確認の方が行きより断然、きっちり調べられた。
ストレッチャーについて尋ねると、事前に予約していないと無理という。
私はてっきり、備え付けストレッチャーみたいなものがあるんだろうと思っていたのが違って、
座席を8席つぶしてベッドにする、ということだ。つまり8席分確保してなければいけいないのだろう。
ということで、行きと同じく、チャイルドシートで搭乗となった。
 
帰りは、天候も良く、何より、飛行機に乗ることは、力も、おねえたちも二度目である。
搭乗時の王様度は、羽田は断然、低かったが、一番に乗ったのは同じ。
乗る前に確認したばかりなのに、座席に向かう抱っこの際に、行きと同じようにズボンに漏らしていること判明。
またおむつ替えが必要となった。
今回は、便所があまりに狭いので、スタッフが待機する場の小さな高いカウンターを使わせてもらって替え。
ここも危険だったし、狭くて高くて不便。機内ではおむつ替えは難しいなと思った。
 
イメージ 4他の乗客が乗って出発前、
座席がかなり余裕があることがわかった。
これなら、空席に寝かせたりもできるかも。
力は眠りモードではなく、
しっかり覚醒して乗りこんだ。
外をみる余裕もある。
 
 
 
 
 
 
 
離陸には時間がかかった。滑走路をぐるぐる回っている際、また力がげほげほとせき込み始めた。
またですかああああ。
ベルトサインは付いている。
でも、もう私も二度目だ。同じ轍は踏まない。
取り出しやすいところに、手動吸引器を準備している。足元も手も自由な状態にしている。
スピーチカニューレは、既にはずしてしまっている。
来るならこいだ。
さあ、手動吸引器だ。先に吸引しておこう!
吸引したらすぐに落ち着いた。
 
離陸時。やっぱり、重力がちょっと楽しそうな感じの力。
そのまま安定飛行に入り、座席を倒してやると、すっかりリラックスになった。
少し寝入ったので、観察していたが、起きた時にやっぱり一度咳き込んだので、吸引して落ち着き。
 
着陸態勢になって、座席を戻したが、なんとか大丈夫。
そのままあっけなく、着陸した。力はなんともなかった。
私は、これで大仕事が終わった、と、飛行機を降りた時に本当に安堵したのであった。
 
 
気管切開していて、力のような障害がある状態での空の旅は、どうか、ということだが、
総合的に考えると、
行きのげほげほは、やはり、天候や環境など、条件の悪さ、が引き起こしたものではないかと思われたし、
また、初フライトでの緊張感、が大きな要因だったと言えるのではないか。
帰りの力は、ほとんど大丈夫だったが、観察してみたところ、乗ることは、快ではないことは確かである。
 
つまり、力に関して言えば、飛行機の乗り物酔い、に近い状態だったのではないかと推測する。
正直なところ、行きの飛行機は本当に手が冷たくなるほどだったし、
なんで飛行機に乗ろうなんて思ったんだろう、と、後悔しないでもなかったが、
冷静に考えれば、痰は、吸引すればすっきりしたし、気管切開していること自体は、搭乗には無関係だろう。
最も心配した呼吸不全やけいれんの発作は全くなかったので、飛行機に乗れない、ということではなさそうだ。
 
イメージ 5
それにしても、行きはパニくった。久しぶりに。
力の飛行機往復のエピソードにとって、神様仏様「手動吸引器様」、であった。
まさか、天災以外で使うとは思っていなかった手動吸引器。
転ばぬ先の杖。準備しすぎたってことはない。
万が一は、いつ来るかわからないことを、肝に銘じたい。
 
無事のフライトに、感謝感謝!