考えられる限りの準備をして、当日。
おねえたちは給食まで学校、じいちゃんばあちゃんが昼頃、車で送ってくれるためにやってきた。
おねえたちは給食まで学校、じいちゃんばあちゃんが昼頃、車で送ってくれるためにやってきた。
力は朝少し起きただけで、ずーっと寝ている。多分、今からのいろいろに逃避モードなのだろうが、
準備で随分労力を要した私が、2,3日前から珍しく怖い夢など見たりして、かなり緊張度が高かったため、
それが力に伝わったのだと思う。
また、台風の影響なのか、前日からねむねむモード、やや吸引時の痰の粘調も気になるといえばいえる。
こちらは晴れて飛行機飛ばないという状況ではないが、予定日程の前半、行き先は天気はあまり良くない模様。
おねえたちの早退を迎えに行き、準備をして出発。余裕を持っているつもりが、ギリギリになった。
空港までの道はやや渋滞気味だったが、
チェックインの時間には間に合った。
チェックインは椅子がある、
「スマイルサポートカウンター」なるもので、
荷物預けも含めて、全てお願いできた。
預ける荷物は、黒スーツケース、おまるバッグ、
衣類のリュック(紫)。
機内持ち込みは、吸引器、注入セット入リュック、
貴重品バッグ、友人へのお土産(魚塩干)だ。
検査場付近に行くと,
激混みである。
少しぶらぶらしようか、
とじいちゃんばあちゃんと話していたが、
係員の方が、
私たちをみてすぐに、
別の入口から
案内してくれたので、
二人とは
あっけなくバイバイした。
検査場では、2人の女性のスタッフが付きっきりで進めてくれた。
持ち込みの医療機器ほかがたくさんだからか、何度もアラームが鳴り、何度もゲートをくぐった。
バッグの中のものも、ほとんど全部出して提示した。
通過すると、搭乗口では、一番に案内してくれるという。既に、おねえたちはぐったりし、力もややぼんやり。
大丈夫か?乗れるのか?おいおい。
搭乗時も、スタッフがついてくれて荷物を持ってくれ、
機内では、客室乗務員が数人、よってたかって、という感じで荷物を運んでくれたり声掛けしてくれたり。
まるで王様のようだった。
機内入口までバギーに乗って移動できたが、それからはバギーは荷物として預けることになる。
力王様を、座席に移動するため抱っこをしたら、ばっちりしっこが漏れており、すぐに着替えをした。
機内のトイレのおむつ替え場所は、力には小さすぎて大変不便だった。これはだめよねー。
力の座席は窓際にチャイルドシートだ。
チャイルドシートは窓際のみ使用可。
緊急時に他の乗客の邪魔になるから。
シートはカーシートとほとんど同様の仕様。
離着陸時は垂直に近い状態になるので、
力にとってはしんどいだろうが、
まあ15分くらいのもんだから、どうにかなるだろう。
乗ると、ぴったりだったし、力も嫌な感じではない。
私たちは横に並んで座った。おねえたち窓際ではなかったが、しょうがない。
続々と乗客が乗ってきて、あれよあれよという間に満席に近い状態になった。こりゃーちょっと窮屈やなあ。
客室乗務員が、「羽田からはとても揺れたので、この便も揺れる可能性が大きいです。」と怖いことを言う。
私も10年来ぶり、子どもたちは全員初フライトだ。しかも、満員。なんだか条件は今一つである。
少し遅れて発進した。私の緊張度と言ったら!子どもたちと一緒なら死んでもしょうがないとあきらめられる。。
などと、究極なことを考えるほど。飛行機に乗ってこんなことを考えたのは初めてだ。
力の状態をずっと観察していた。タオルをちゅうちゅうしたままなので、やっぱり不安なんだろう。
離陸際の重力は大丈夫か?と力を見ていると、離陸時の一番強烈な時ににやあ、と笑み。これはいいんだわ。
安定してから少し痰吸引はしたが、上空では眠ってしまった。
顔色は悪くないが、快ではない、という感じ。
客室乗務員が「揺れるかも」と言っていたのは案の定あたりで、かなり揺れがひどい。
ベルトサインはほとんど消えなかった。
力は垂直座位のままだ。条件悪いなあ。
前のモニターに、現在位置が何度か映し出されていたが、全くこんな時は進みがのろくてのろくて。
え、まだ松山上空なの?などと、思いつつ。
窓外の景色を見ながら、などとは、ほとんど思えないほど余裕がなかった。
短時間の安定飛行の後は、あっという間に着陸態勢に入った。
力はそのころにぼんやり目を覚ましたが、いきなり、げほげほとせき込み始めた。
既に、ベルトサインは出ており、電子機器は使用しないでください、とアナウンスがあったばかり。
げげげげ、どうしよう?15分くらい、持つかな?どうしようどうしよう、とあわあわし始めた私。
再度げほげほと、咳き込む力。スピーチバルブをとった。あーこりゃいかん、吸引せな持たんぞ。
急いでバッグ底に入れておいた手動吸引器を取り出した。
いつも緊急用としてアンビューバッグの箱の中に入れているだけで、実際に使ってみたのは練習の一度きり。
ばたばたとセットして、とりあえず、噴出したのだけでも吸引しよう。
・・・・。あわてているため、吸引できず。あら、これどうやって使うんやったっけ?
そうこうしているうちに、まだ咳き込む力。うわーどうしよう、どうしよう、冷たい汗が。。。
と、吸引できた。あーそうやった、簡単な操作だったのだ。考えすぎ。全く平常心ではない。
吸引すると、落ち着いた。咳き込みもなくなった。寝起きで一気に出てきたのだろう。
しばらくして、無事に着陸した。やったー、やっと地上だ。どうにかなる、これで。
往路の着陸時は、静かな闘いの時間であった。
無事に到着して本当に本当によかった。
乗る前にずーっと寝ていたのが、
ネックだったのだと思う。
もともと寝起きはどうしても痰が多い。
また初フライト、という緊張感で、
力の普段状態からも精神的に程遠かったのだろう。
台風の影響もあったのかもしれない。
満員で窮屈だったのかもしれない。
要素としては、ほとんどいいことはなかった。
頑張って乗れた、のだと思う。
いいことは、呼吸状態は安定していたこと。
手足や体に無駄な力も全然入っておらず、
脱力系だったことだ。
これでけいれんなど起こしたら、
本当に大変だったと思う。ああーよかった。
客室乗務員からは、子どもたち全員に初フライトのメッセージをいただいた。
なお、ピンクのタグは、機内入口までバギーに乗っていっていいですよ、というもの。
到着した日から2日ほどは、今一つな体調で過ごした力だったので、
帰りの飛行機は乗れるのだろうか?しかも、最終日はディズニーランドやし、と、
ディズニーランド、やめるかどうするか、というほどだったが、体調は天気と共に安定してきて当初予定通り。
とりあえず飛行機で帰宅、となった。
ただ、行きはチャイルドシートだったが、もしできることなら、ストレッチャーに寝かせて乗れるか尋ねることに。
羽田でもスマイルサポートカウンターでの対応。
車いすの方や、ベビー連れの方も同じく、このカウンターで手続きをしており、少し順番待ちした。
羽田での確認の方が行きより断然、きっちり調べられた。
ストレッチャーについて尋ねると、事前に予約していないと無理という。
私はてっきり、備え付けストレッチャーみたいなものがあるんだろうと思っていたのが違って、
座席を8席つぶしてベッドにする、ということだ。つまり8席分確保してなければいけいないのだろう。
ということで、行きと同じく、チャイルドシートで搭乗となった。
帰りは、天候も良く、何より、飛行機に乗ることは、力も、おねえたちも二度目である。
搭乗時の王様度は、羽田は断然、低かったが、一番に乗ったのは同じ。
乗る前に確認したばかりなのに、座席に向かう抱っこの際に、行きと同じようにズボンに漏らしていること判明。
またおむつ替えが必要となった。
今回は、便所があまりに狭いので、スタッフが待機する場の小さな高いカウンターを使わせてもらって替え。
ここも危険だったし、狭くて高くて不便。機内ではおむつ替えは難しいなと思った。
他の乗客が乗って出発前、
座席がかなり余裕があることがわかった。
これなら、空席に寝かせたりもできるかも。
力は眠りモードではなく、
しっかり覚醒して乗りこんだ。
外をみる余裕もある。
離陸には時間がかかった。滑走路をぐるぐる回っている際、また力がげほげほとせき込み始めた。
またですかああああ。
ベルトサインは付いている。
でも、もう私も二度目だ。同じ轍は踏まない。
取り出しやすいところに、手動吸引器を準備している。足元も手も自由な状態にしている。
スピーチカニューレは、既にはずしてしまっている。
来るならこいだ。
さあ、手動吸引器だ。先に吸引しておこう!
吸引したらすぐに落ち着いた。
離陸時。やっぱり、重力がちょっと楽しそうな感じの力。
そのまま安定飛行に入り、座席を倒してやると、すっかりリラックスになった。
少し寝入ったので、観察していたが、起きた時にやっぱり一度咳き込んだので、吸引して落ち着き。
着陸態勢になって、座席を戻したが、なんとか大丈夫。
そのままあっけなく、着陸した。力はなんともなかった。
私は、これで大仕事が終わった、と、飛行機を降りた時に本当に安堵したのであった。
気管切開していて、力のような障害がある状態での空の旅は、どうか、ということだが、
総合的に考えると、
行きのげほげほは、やはり、天候や環境など、条件の悪さ、が引き起こしたものではないかと思われたし、
また、初フライトでの緊張感、が大きな要因だったと言えるのではないか。
帰りの力は、ほとんど大丈夫だったが、観察してみたところ、乗ることは、快ではないことは確かである。
つまり、力に関して言えば、飛行機の乗り物酔い、に近い状態だったのではないかと推測する。
正直なところ、行きの飛行機は本当に手が冷たくなるほどだったし、
なんで飛行機に乗ろうなんて思ったんだろう、と、後悔しないでもなかったが、
冷静に考えれば、痰は、吸引すればすっきりしたし、気管切開していること自体は、搭乗には無関係だろう。最も心配した呼吸不全やけいれんの発作は全くなかったので、飛行機に乗れない、ということではなさそうだ。
それにしても、行きはパニくった。久しぶりに。
力の飛行機往復のエピソードにとって、神様仏様「手動吸引器様」、であった。
まさか、天災以外で使うとは思っていなかった手動吸引器。
転ばぬ先の杖。準備しすぎたってことはない。
万が一は、いつ来るかわからないことを、肝に銘じたい。
無事のフライトに、感謝感謝!