みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

「想定内最悪」

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手術前日の力は完全に昼夜逆転し、皆が寝静まった消灯後から大量にうんちしたりなんだかんだ。日がかわって寝たが、ずるずるで起き吸引、の繰り返しで朝になった。

当日は一例目なので、深夜から絶食。早朝に坑てんかん剤と眠り薬を注入すると、しばらくして熟睡。

8時過ぎに力は眠ったまま術場に入り、私は待合室に。
ここは当地で最も大きな大学病院だ。既にかなりの人達が各々に待っている。室内モニタには各々患者名は伏せてあるが「麻酔中」とか「手術中」とか表示されるので、大まかな進捗はわかる仕組み。
力は麻酔込みで三時間超の予定と言われていた。ということは正午過ぎには会える。

麻酔終わり手術中の表示に変わった頃、家の事を済ませて夫がやってきた。じいさんばあさんも来たので、四人で世間話しながら待っていた。

正午過ぎ、一時も過ぎた。そろそろ心配になりはじめた。いい方に考えようとするが、不安な時間。一時半過ぎに「手術終了」表示が出て、説明のため呼ばれた。夫とともに。

部屋に入ると、まだ術着のままの執刀医。

「いやあお待たせしました。予想以上に大変なことになっててですねえ。」

この第一声を聞いた瞬間、ふらっと貧血ぽくなった。
すぐに座って話を聞いた。まさに、開けてびっくり、だったらしい。

今回の手術内容は、気管内の肉芽を除去し、新しい管「Tチューブ」を、カニューレに代わって挿入、留置すること。
しかし、開けてみると、気管内の、口側にも、下側にも、肉芽がびっしりギュウギュウ詰めであったらしい。

「これじゃ取っても取っても、肉芽が出るわけですよ。声出すこともできないし。隙間が無いくらいで。」

胃から逆流する胃酸により、気管内が荒らされたことが原因という。肉芽をすっかり除去してしまうと、気管壁はペラペラになり、もともとの気管切開孔の位置も上すぎたらしく、新しく孔を作り直したとのこと。
旧孔はそんなわけですぐに閉じることができず、近くの軟骨を少し切り取り、それを利用して蓋にするために、今回のうちにあらかじめ旧孔横に埋め込み、数ヶ月後に手術で完全に閉じる方針だそうだ。

新しく留置するチューブは気管内にきっちり挿入するため、フルオーダーで製作してもらったものだが、執刀医がいろんな場合を考え、もうひとつのチューブを併せて準備してくれており、結果それが大当たりだったらしい。念のためのチューブが今力の気管内に入っている。

「言い方悪いですが、想定内の最悪の例でした。でも、しっかり管理していけば大丈夫です。新しいチューブはいい位置にいれることが出来てますから。ただ入院は予定より長くなるのでご了承下さい。」

こんな内容だった。

「想定内最悪」
全く、この言葉をどうとらえるのか、だが、結果、力は私達のもとに戻ってきたのだから、想定内最悪大いによし!だ。手術がこのタイミングでなく、また想定内がもっと狭い範囲で考えられていたのなら、想定外の枠にはみ出ていたかもしれないのだ。以降の、退院延期や、再手術ということも、まずは、どうということはない。力は私達の手にあるのだから。

力は病室に戻ってもまともに覚醒せぬまま、今日が終わりそうだ。
今思えば、術前の力の妙な不調も、私の珍しくも不安ストレスも(鼻のてっぺんの吹きでもの)、この想定内最悪を予感したものだったかもなあ、と思う。
でも、無事終わってからの力の顔を見る限り、なんとなく、乗り越えた感じがしている。
まだ吸引も大変だし、酸素投与中だが、こんなに眠れるということはいいことだろう。しっかり休養してぼちぼち回復していきましょう!


※ご心配いただいた皆さん、メールやコメントなどいただき、ありがとうございました。とても心強かったです!