みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

手術決定と、方針決定!!

先日、体調不良でキャンセルした耳鼻科外来を受診できた。

初診だったので、朝一で並ばなければならず、また、延々と待ち時間がある。
新外来病棟になった、とは聞いていたが、行ったことがないところはやっぱり不安だ。
ぶつぶつ言っているのを聞いてか、ばあちゃんが朝一でうちにきてくれて、同行してくれて助かった。

力は前夜、また夜なべ君だったので、まあ、起きんやろね、とは思っていたが、熟睡。
着替えさせても車に乗せても、全く目を覚まさず。
うんちをいつしてもいいように、防水シートをバギーに敷いて、受診待ち。

新外来棟は、新しいだけに、最近の病院建築らしく、天井高く、広々として、開口部が多く気持ちいい。
駐車場も病院入口までひさしがあり、その日は天気は良かったが、ありがたかった。
院内も動線計画がちゃんとなされていたし、待合室も、人は多かったが、窮屈でなく、
長時間の待ちも、苦痛ではなかった。
病院は、こうでなければ!
ほとんどの人が鬱々として来院するのだから、せめて心地いい空間を、これからも願いたい。

さて力は、延々と寝ていた。
ついに呼ばれて、診察室を素通りして連れて行かれたところは処置室。ようやくむにゃむにゃと覚醒。

今日のメインは、力の気管切開孔のおばけ肉芽をどうするべきか。だと思っていた。
あららら、今日は診察だけでは?と思っていたらどんどん処置モードに入っていった。

紹介していただいた医師は、当地域で小児の耳鼻咽喉の症例をおそらく最もたくさん持つベテラン医師。
2年前に力が肉芽の手術を受けた際も、執刀医として参加してくれた医師なので、
力のことは知ってくれている。
私は初対面なのでご挨拶したが、そこそこに、すぐに肉芽除去処置になった。

先日、かかりつけの病院で肉芽切除処置していたところ、
いきなりけいれんが起こり呼吸不全に陥ったエピソードがあり、
麻酔なしでやるのは、危険だ、との判断をされて、その後は無理せぬようにしていたのだが、
と、その旨話すると、
看護師さん3人ついてもらい、酸素を供給しながら、酸素飽和度をチェックしつつ処置。

処置は、原始的といえばいえる。
カニューレを抜いて、孔内の肉芽がべろんと外に出てきたところをつかまえて、チョキチョキするのだ。
もちろん出血、またスプラッターであった。

処置するとは思ってなかった私、力に処置しやすい前開きの服でなく丸首シャツを着せてきてしまい、
医師もやりにくそうだったし、当然ながら、服は血だらけになった。

処置中も、医師と話しつつ、脇についていた。

医師は、肉芽もだが、どちらかというと、
首周りのじょくそうの方が毎日のことだし心配である、とのこと。
また、
これだけ、きっちり気管切開孔を作っているのに、どんどん肉芽が発生する、ということは、
おそらく、胃酸が逆流していることが原因である、という。

担当医からもそんな話を聞いていたし、それは、そうなのだろうと納得である。
力はよくタオルをカミカミするが、薄色タオルだといつのまにか薄黄色の洗濯でも取れないしみがつく。
吐いていないのに、ちょっと酸っぱい匂いがするし、そのままである。胃酸が悪さをしているのだ。

といっても、逆流症の力は、それが体質。
それならどうするかというと、胃酸を抑える薬の投与しかない。

以前、胃酸を抑える薬投与には既にトライしたことがある。
でも、その薬は、粉末でなく微小カプセルなので、
微小なのだが微妙に胃ろうボタンの穴に詰まることが何度もあり、投薬断念した経緯を話した。

うーーん、と医師。

そんな話をしながら処置は続き、力は大汗をかいて号泣し始めたが心配したけいれんは、
うまいこと回避していた。

すると、ふと、
「この子って、気管切開おいとく必要、あるのかな?」
と医師。

気管切開をせざるを得なかった経緯を話した。
力の多発性奇形症候群の一つとして、小顎症がある。
乳児のころは、顎が小さいため、空気の通り道の気道自体が物理的に狭くなっており、
寝ている時に舌根沈下で呼吸不全に陥ってしまうことが頻発。
とうとう危険な状態になって挿管され、そのまま気管切開という選択をせざるをえなかったのだ。

それから4年。
今ではずいぶん顎も発達してきているし、体重も増えた。
気道の確保は、今はあまり問題はないのでは、とのこと。

「この子、声出せる?」
と聞かれた。
号泣している時には、漏れ聞こえる小さな声。
そのことを言うと、ちょうど号泣している力を見て、あ、ちょっと出てるね、と。

誤嚥は?」
力は、食事練習していても、あきらかに誤嚥したことは一度もないし、肺炎になったこともなし。

「それなら、よし。気管切開孔を作りなおして、Tチューブを入れましょ。
そして、気管切開を閉じる方向で進めましょう。よし。その方針で決まり、それで行こう!」

と言った。

かかりつけの医師からも、顎が発達すれば、気管切開は閉じることはできる可能性はある。
と聞いていたが、
そのきっかけが、本当に来るのか?来るならいつ頃来るのだろう?と思ってはいた。
それがここで、おばけ肉芽と、ずっと悩まされ続けたじょくそうがきっかけになったのだった。

イメージ 1
(画像は参考)
Tチューブとはカニューレの代わりに空気の通り道を確保するもので、
カニューレのようにひもで固定することなく、
気管内に固定して、交換を頻回にすることはない。
ただ、交換には全身麻酔をしなければならず、
基本、入れっぱなしなので、
再度肉芽ができたり、内部で何か起こっていないを、
定期的にチェックしなければならない。

現在の力の問題を解消するものとして、
Tチューブと、もう一つの候補で、レティナ、というボタン型のものがあったが、
装着をトライしてもらったが、孔の入口が小さすぎて無理だった。

Tチューブは、気管内に留置するので形は全てオーダーで作ってもらわねばならない。
作成に一月はかかるそうだ。年末年始もあるし、手術は2月頭と決定した。


力は処置終了して、血まみれの汗だくだったが、医師に声掛けられると、
疲労した顔で、ぷぷー、と言った。
きっと、ちょっと抗議、ちょっと感謝の「ぷぷー」だったのだろうと推察する。
ぷぷー、が出るくらい余裕があって、安心した。

事前検査の説明や入院申込み等の書類を書き、全部終了して帰宅したのが13時半。
力は、この6時間の間、うんちをちょこっとしただけだったので、
帰宅してすぐにおまるに座らせると、案の定、たくさん放出。いい子いい子。


私はすっかり疲労したが、それを上回る、うれしい展開に、ハイテンションだった。
医師から、気管切開閉じる方向で行きましょう、と言われた時は、
はっきりいって、涙出そうだった。
ばあちゃんがいなかったら、もしかすると泣いていたかもしれない。

閉じる方向で進んでも、断念しなければならないかもしれないし、
今までカニューレから息をしていたため、
いわば、自力で息をすることをもう4年間もさぼっているのだ。
もし、うまくいったとしても、この年月と同じだけ、かかるかもしれない、
とも言われた。

でも、それはそれで、いい。
気管切開閉じられるかもしれない、という、土俵に乗れたこと。何とありがたいことか。
それから半日は、力が自分で息をして、おしゃべりしている状況が来るかもしれないと、
妄想抑えきれず、というところだった。

ということで、その日に日記更新すると、
テンションあがりまくった気恥かしいものになりそうだったので、
数日投稿をおさえていた。それにしても、数日も~。


その前に、手術があるのだ。
このインフル猛威環境の術前の体調管理の厳しさや、
術後の予想できない何らか展開があるかも、という覚悟も肝に銘じつつ、
前向きに、いこう!
今年最後の、うれしいうれしいプレゼントを胸に。