みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

かわいい子には旅をさせよ

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待ちに待った夏休み。
下のおねえRが就学したので、2人ともそろって長い休みは初めてのこと。
なのに、平日は留守家庭に弁当持って通い、
週末は、いつもの週末と変わらず、外出制限のうちだ。
なんとか企画をいろいろ作って、飽きないように努力はするものの、
母、すぐにネタが尽きるし、眠い、と言って、すぐに昼寝をしてしまう。

「いいなあ、普通の家はさあ、いろんなところに行けてさあ。」

と、上のおねえNがぼやいていたのを、
ちょうど、虫の居所が悪い時の私に聞こえてしまった。

「ちょっとN、「普通」の家ってどういうこと?「普通」って何よ?」

と言うと、黙ってしまった。いやいや、悪かった。
Nは、ただ、素直に、そう言ったまでのことなのに。

一昨年はちょうど力が退院前で、母が長いこと家に帰れず、おねえ二人は放浪の身。
昨年は、力、入院が続き、やっぱり母は家におらず、おねえ二人はまた放浪の身。
今年は、力は入院せずに頑張っているが、父がおらず、力は外出できずに、おねえ二人は軟禁状態。
まったく、こう書いてみると確かに、「普通」の家の状況ではないのは間違いないな。

だから、母なりには、今年の夏休みは、週一回は力をヘルパーさんに頼んで、
3人で過ごす時間を作ろうと、実行していたのだ。
おねえたちは、プール教室がいい!と言うので、プールに連れ、泳ぎを教えたりしていたが、
人間と言うもの、欲深である。
2週間過ぎる頃には、またぶうぶう言い始めた。

「なかなか外に出られず、ぶつくさ言ってるのよねえ。しょうがないのにねえ。」
と、友人たちに愚痴っていたが、
それを聞いた友人のひとりが、きっと気遣ってくれたのだろう。
家族でのキャンプに、おねえたちを連れて行ってあげようか、と申し出てくれた。
しかもその行先は、Nが生まれた地である。おお、なんとまあ!

でもねえ、おねえたち、行くかなあ?緊張するもんなあ、などと思いつつ、
帰宅してきた彼女らに尋ねてみると、

「行く行く!」

と即答するではないか。

「あのね、Kくんの家族だけしかおらんけど、大丈夫?」

「だいじょうぶー。」

ということで、ご厚意に甘えて、連れて行ってもらうことになった。
前日から準備万端、やる気満タンだったが、
夜寝る前には車に酔いそう、だの、鼻血でたらどうしよう、などと、些細なことを言い始めた。
少しは不安も感じていたのだろう。

でも、出発前は、すっかり楽しみモードに入り、
朝早くのお迎えに、行ってきまーす、と後ろも振り返らずに、走り去ってしまった。
Rは行く前、ご丁寧にも、下記のような文面を残して。

「おかあさんへ
ちーくんといっしょにがんばってね。Rもがんばるよ。
さみしくなったらいつもこのおてがみをみてね。(クローバーと青い花の絵)Rより」

「ちからくんへ
きょうとあしたはRとおねえちゃんはいないからげんきでまっててね。Rより」

母はそれから力と通園した。
帰宅後は、よおし、又、自由気ままなジャンキー生活だ、と、やや、わくわくしていたが、
通園の疲れで夜にはテレビを観る気力もなくなり、思ったほど堕落できず。
夜は久しぶりに気絶状態で布団も敷かずに床に寝てしまっていた。
いやはや、これがまさにジャンキー状態ってことか。

翌日、午前中のうちに連れて行ってくれた友人から連絡が入り、
Rが、片目がものもらいのようなので、帰宅する、とのこと。
本当は日一杯遊ぶ予定だったのだろうが、申し訳なかったなあ。
おねえたちは、元気に昼前に、帰宅してきた。

Rの目はやっぱり腫れており、すぐに眼科受診。感染性ではないらしく、安心した。
おねえたちは、帰宅するなり、争うように、キャンプのことを話し始めたので、
時系列に、かわりばんこに話してもらった。とても楽しかったようだ。
Nは、キャンプ場の図を、色付きで書いて説明してくれた。

心配性の夫と、キャンプについて電話で話したが、
「あいつら、よー行ったね。成長したね。」
と驚いていた。同感だ。

自分たちの信頼する大人と、仲良しのお友達がいれば、無条件なのだろう。
一緒にいたい、と思えるお友達や家族が周りにいてくれることは、
親子ともども、本当にありがたいことだ。

「かわいい子には旅をさせよ」とは、よくいった。
おねえたち、これからも、いろんなところに、いろんな人と、
行って、見て、聞いて、感じてきてほしいものである。

帰宅後、R、ご丁寧にもまた、昨日の続編のように、手紙をくれた。

「おかあさんとちいくんへ  もう さみしくないよ。  Rより」


「かわいい子には『どんどん』旅をさせよ!」