みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

子どもに歌って欲しくない曲

大人二人とも歌好きなので、
子どももその血を受け継いだのか、はたまた、環境に慣らされたのか、
得意とはいえなくても、音楽が大好きであることは間違いない。
現在難聴と診断されている力でさえ、
耳元で歌うと、じーっと聞いたり身体をゆすったり、うれしそう。

ルーティンな一日のうちで、
誰も歌わない、ということは、ほとんど無。
誰かしら、声を張り上げて歌っているうるさい家だ。


ちょいと古い話だが。

こんな家なので、
晦日紅白歌合戦、なんやかんや言いながら、
絶対欠かすことの無い季節物。
いつもはテレビがほとんどついていないが、大晦日は特別。
寝る前まで、子どもたちもみていいことにしている。

子どもがいればリアルタイム視聴がほとんど不可能なので、
毎年録画、元日に子どもたちが、その録画をみる、というパターン。
で、お気に入りの曲を何度もリクエストして、すぐに覚えてしまう。
その速さ正確さたるは!
驚くほどだ。
何度か聞いただけで、
歌詞の意味も分からず、すっかりそらんじている。

下のお姉ちゃんRは、特にそれが得意で、
その上、難曲といわれるものでも、
メロディラインまでしっかり記憶して、鼻歌交じりにふんふんと歌う。

今年はレコード大賞もあり、きっと多くの家庭がそうだったように、
コブクロ「蕾」を、
お姉ちゃんズ、まっさきに覚えてしまった。すらすらと、間違えずに歌っている。
私がでたらめに大声で歌っていると、却下される。
たまに放映されている、
「間違わずに歌えたら200万」
のテレビ番組に出演させたいほど。


そんな正月休みのある日。
いつものように、休日は力が寝ていれば、大幅に寝坊してしまう母。
既にいつもどおり起きているお姉ちゃんたちは、
邪魔せず、おとなしく遊んでいるのだ。いい子達やわあ。

下のお姉ちゃん、冬だし、甘えもあって、布団にもぐりこんでくる。
そして、歌い出した。

「わからないことだらけでも ほんとのことだけさがしていこう 
そんなきもちをだれもがきっと せいしゅんとよぶのだろう」

-あー、まきはらだー、と母はぼんやり。

「まっすぐにまっすぐにのびる このみどりいろのみちを 
あるきながらつづいていく ぼくらのぐりーんでえいーず」

-げ、全部歌いきった。念仏みたいやなー。すげーな。

次曲。
「ちゃんとあなたに つたわあってるかなあー じゃんじゃじゃーんちゃらちゃっ
ねえーあなたとだからー~」

-ドリカムやー。効果音付かー。

三曲目。
「ひらひら、まいちる はなびらがひとつ ゆらゆら さまよい あなたをみつけた」

-?これは?

「このてでええ このてでえ あなたを よごしてえ なんども なんども わたしをこわして~」

-!!?!

「そのてでえええ なんどもおおお!!(片手を上げて絶叫調)」

もー耐えれん。
爆笑のうち、目を覚ましてしまった母。隣で爆睡していた父も、ついにこらえきれずに。

「あのね、R、歌うのはいいけど、その曲さあ、この家以外で歌わんでね。」
「えーなんでー?そおのてでええええ、わたしをおおお、こーわーしいてえええ!」
(この後、調子に乗り手をつけられず)


歌を覚えるのはいい。

でも、子どもにはまだ早い曲は、全くたくさん存在するものだ。

ちなみにRが歌ったとどめ曲は「哀歌(エレジー)平井堅(:映画『愛の流刑地』の主題歌)」