みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

⑱かわいそうじゃないよ

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「みんなのチカラに」連載18回目が掲載されました。
http://www.nishinippon.co.jp/medical/2007/02/post_254.php

前回の17回目のウラ話の欄に、この18回目のことを書いてしまっていたことに、
今気づきました。
何のことやら、わからん、と思われた方もいたでしょう。
ということで、こちらに転載。

9歳の男の子の話。
この手紙をいただいて、
読んだのは看護中の力の病室だったのですが、
泣いてしまいました。

この男の子はとっても明るく、
はきはきして、
しっかりとお母さんを支えています。

こんなに頑張る子どもたちの姿を見せられたら、
誰も何も言えないと思います。

ごちゃごちゃ大人が悩んでること、
しょうもないよなあ。


「かわいそう」にムカついた話には、
実はもう一つのウラ話があります。
どっちかっていうと、こちらの方が、シビアな問題。

入院中、いろんなお母さん達と話して、
「そうそう、うちもよ!」とよく聞く話。

それは、
子どもが生まれて障害や病気があった場合、
「うんだ母親に原因がある」
と思う人がとても多いということ。

「何か変な添加物入った食べ物食べてなかった?」
「妊娠時に薬飲まなかった?」
「ちゃんと規則正しい生活をした?」
「タバコ吸ってなかった?」
「身体を大事にしなかったんじゃない?」

こんなことを散々聞かれて、
暗に責められるお母さんが、とても多いようです。
これは、流産、死産してしまった場合も、
似た状況があります。
そして、続けて、
「この子、こんな身体に生まれて、かわいそうかわいそう。」
とつながっていくって流れ。

確かに、
親の生活習慣や性格など、何かに原因がある場合もあると思いますが、
ほとんどのお母さん達は、
うまれてくる赤ん坊のために、
いろんなことを我慢して、
いろんないいと思えることをやって、
まさに、命をかけて、産んでいるはず。

「かわいそう」
は、ひょいと口にのぼりやすい言葉だけれど、
使い方ひとつで、
本当に、深く相手を傷つけてしまう言葉だと思います。

気をつけなきゃ、と、私も自戒しました。


みんなのチカラに<18>かわいそうじゃないよ

 「かわいそう」。障害がある子や病気の子に対して、つい、こう言ってしまってはいないだろうか?

 二歳の男の子のお母さんと病棟で仲良しになった。男の子はダウン症で、生後すぐから手術を何度も受けている。長期入院組。ギャグの「しぇー」が得意な芸達者な病棟のアイドルだ。

 気さくで明るく、どこへでも男の子を連れて行くお母さんと話をした。「かわいそうって言われるとムカつかん?」。お互い、そうそう! と盛り上がった。

 「かわいそう」は同情的でやさしい響きだが、使い方によってはとてもひどい言葉だと思う。闘病中の子どもたちに対して発せられる「かわいそう」には「普通に生まれずに」とか、「これから大変で」とか、だいたいそんな意味が頭についている。

 「自分はこんなに健康でうらやましいでしょ」と、あからさまに言う人はさすがにいない。でも少しはこんな気持ちが裏に潜んではいないか? 受ける側の問題もあるかもしれない。子どもの障害や病気を隠し、必要以上に引きこもってしまっている人たちが多いと聞く。理由はどうであれ、子どもを恥だと思うことは間違っていると思う。

 力(ちから)が生まれて、染色体異常などが分かった時、夫は泣いて憔(しょう)悴(すい)して、ひげもそらずにどんよりしていた。私は夫のそんな「いかにも」な姿が無性に嫌だった。

 「かわいそうな子どもの親って同情されるような姿を見せたらいかん! その方がよっぽど力がかわいそうやろ。力君のお父さんかっこいいよね、って言われるくらいにしゃきっとしてよ!」。何度尻をたたいたことか。

 順調に回復している今でも、力のことを「かわいそう」と言う人はいる。それも多くは身近な人だ。始末が悪い。何がかわいそうなのよ? これがこの子の個性と思えるならば、もっと前向きな、建設的な言葉を言えるはず。言われるたびに腹が立っていた。

 ある日、生まれてから10回以上も手術をしている男の子のお母さんから手紙をもらった。何度も入退院を繰り返し、お母さんは命の心配もした。「自分たちは幸せだ、だって今はもう命にかかわらないんだもの」と言う。男の子は片足のひざから下がない。装具をつけて毎日汗だくで歩行リハビリを続けている。

 入院が長い子どもたちは驚くほど大人びている。彼もそう。いつもこう言っているそうだ。「今の人生で病気と闘ったり、病気の人の気持ちが分かる人たちは、たましいが磨かれているんだ。だからその人たちは、今度生まれてくるときには必ず健康な身体で生まれてくるんだよ」

 九歳の男の子の言葉だ。すぐに腹を立ててしまう自分が恥ずかしくなった。

 言葉1つについて、こんなに深く考えるのは当事者になったからなのかもね、とお母さんたちと話した。今まで私たちも同じように、誰かを傷つけていたのかもしれない。