みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

⑰困っときはお互いさま

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「みんなのチカラに」連載第17回目が掲載されました。
http://www.nishinippon.co.jp/medical/2007/01/post_249.php

入院中の子どもたちからは、
元気をもらうことばかりでした。

ある女の子、何度も入院を繰り返していると、お母さんから聞きました。
足に装具をつけ、
この連載の中の男の子と同じく、
入院中は毎日歩行リハビリを続けていました。

ある日、
私が力を抱っこしている時、
一生懸命手すりを伝って、その女の子が側を歩いていきました。
力をみて、

「頑張れ!」

と声をかけてくれました。

リハビリの最中で、汗だくの彼女。
それでも、
チビの力に対して、
激励できる気持ちがちゃんとある。

声かけてくれた後姿見ながら、
ちょっとうるうるっとしてしまった。

頑張れって、こっちこそ言わなきゃならんのに。
私が励まされました。


みんなのチカラに<17>困ったときはお互いさま

 力(ちから)が入院して半年が過ぎた。真冬に入院し、春までに何度も怒とうのような出来事を経た。会う人会う人に「顔がシャープになったね」と言われた私。やせたとは違う。ずっと戦闘状態でギラギラしていたからに違いない。

 四度目の手術がうまくいった梅雨以降はトラブルもなく、周りを見る余裕が出てきた。見回すと、病院ってとてもおもしろい不思議な所だ。

 大きい子ども以外の入院は保護者が24時間付き添いになる。付添人は簡易ベッドと寝具を借りる。折り畳み式の台に薄い布団を載せただけ。腰に負担がかかり、身体に悪そうだ。その上レンタル代もかかる。長期入院が予想されていたので、うちは購入した寝具を持ち込んだ。クッションが付いてソファにもなり、費用対効果も含め大正解だった。

 力のいる病棟は外科、整形、眼科の患者さんが主体。早い人は二泊ぐらいで退院するが、長期になると数カ月、それも入退院を繰り返す常連さんも多い。力は症状が重く、ずっと個室だったため、実際に体験したわけではないが、常連さんたちの話を聞くと、「大部屋」ではいろんな苦労があるらしい。

 大部屋は四床だが、それぞれ1人ずつ大人が寝泊まりするので計8人。付添人の簡易ベッドを広げると、看護師さんが処置するスペースもぎりぎり。泣いている子どもをあやしもせず、放置するなどモラルがない人がいると、途端に険悪なムードになるそうだ。共用のシャワー室やコインランドリーも順番を無視する人がいる。付き添いだけでもストレスなのに輪をかけて、という状態だ。

 でも、同じ境遇の仲間意識から、だんだん声掛けなどが生まれることは確か。病室のプライベートはあってないようなものだから、隣でシビアな症状説明があっていても聞かないふりをする、お母さんが風呂に行っている間に赤ちゃんを見てあげる、雨が降ってきたら洗濯物取り込みの声が掛かる。助け合って生活している「長屋」だ。

 最近の生活では見ることができなくなりつつある交流は、ココならではなのかも。「困ったときはお互いさま」を地でいく毎日。個室の私にも声掛けしてくれるお父さん、お母さんたちとのちょっとした立ち話やおすそわけは楽しくて新鮮だ。

 病室から出れば、通路や食堂はパブリックな空間。装具を着けて通路を何周も歩行リハビリする男の子、点滴を引っぱってきて食堂で勉強する女の子、不安や涙を隠してわが子を叱咤(しつた)激励しながら付き添う親たち。胸が熱くなる。こんなにも頑張っている子どもや親たちがたくさんいる。エールを送らずにはいられない。私たちの悩みなんて、何てちっぽけなことだろう。毎日、彼らに元気をもらい、後ろ姿に教えられているんだ。

 みんなに会えたのも、力が生まれたからこそ。貴重な経験だ。