みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

これならどう?じゃあこれは?

今日も午後から面会。
心臓の心配が出てきたので、昨夜が一番、力のことが頭を離れなかったが、幸い電話もかからず。

まず外科医から。
炎症反応はさらに昨日の約3から1台に低下しており、
腹膜炎の危険は脱したのでは、とのことだった。
手術傷については、まだ赤く、菌が存在しているらしい。
菌は培養検査で、MRSA黄色ブドウ球菌)という、
通常の抗生剤では効かない菌が存在していたことが判明。
先んじて、手術後からMRSAに効果のある抗生剤も併用していたので、
拡大感染は防げたようだ。まあ、1勝位してもらわんとね。

主治医からは、内科系の診断について。
脈拍はまだやや低いものの、昨日よりは改善している、
浮腫は避けたいので、
利尿剤(=強心剤)を投与して、やや脱水気味に水分を排出させている、とのこと。
このまま血圧が下がって危険な状態になることはまずないようだ。

よかった。
力、まだ頭の汗は出ているようだが、
氷枕なんかで少しはおさまっているよう。
今日は、お得意の白目をむいてぼんやりしていたのがやや気になったところではあったが、
目を開けると、私や夫をしっかりと見ていた。

「力君の場合は、もしかすると、多脾症の疑いがあるかもしれません。」
と主治医。
多脾症とは、通常左右非対称の臓器形成が、対称になって同じ臓器が複数個になっている症例。
内臓異常なので、血流が一般の人と異なり、さまざまな症状が見られるというもの。

今すぐ、多脾症だからどうだ、というわけではないので、
体調が落ち着いてから、
将来の治療に向けて検索する必要があるかも、とのことであった。

力くーん、君は次々に課題を出してくれるわね。
これならどう?じゃあこれなら?って。

医師が話す言葉、少しは理解もできるし、
わからないところは質問して消化しているつもりだが、
やっぱり、いろいろと勉強して知っていることに越したことはない。
勉強勉強やなあー。
家でミルク注入したり、浣腸したりしてた頃は、
このままいけば看護師になれるかも、
なんて思っていたが、
このままいくと、もしや医師にもなれるかもよ。私。(なれん、頭が足りんやろ)
重病の家族がいたので、
勉強して医師や看護師を目指しました、
って話、よく聞くけど、こういうことか、と実感した。

でも、命の危機である山は、既に越しつつあるようだ。
なんやかや言うまい。
きっとこれからずーっと続くであろう課題、
一緒に取り組んでいこう~!


【参考】
☆多脾症、無脾臓
無脾症・多脾症とは、
左右非対称であるはずの内臓が一部左右同じになって生じる多彩な病気。
脾臓は本来おなかの左側に位置する臓器だが、
多脾症では左側にあるものが両側に出現する。
そこで多脾症のことは左側相同と呼ばれたりする。
心臓の構造も左右対称ではなく、
右心房・右心室と左心房・左心室は別の働きをしているため、
無脾症・多脾症では80%以上の場合なんらかの先天性心疾患を合併している。

・症状、経過
先天性心疾患を合併している場合、
多くは新生児期にチアノ-ゼ、
もしくは心不全症状(息が速い、脈が速い、ミルクの飲みが悪い)を呈してくるが、
なかには乳幼児期を過ぎてから症状を呈してくる場合もある。
また先天性胆道閉鎖症、腸回転異常といった腹部臓器の病気が先にみつかる場合もある。

・血行動態
合併する心疾患として頻度の高いものは、
左上大静脈遺残、下大静脈欠損、肺静脈還流異常、
心房中隔欠損、単心房、単心室心室中隔欠損、房室中隔欠損(共通房室弁)、
両大血管右室起始症、大血管転位症、肺動脈狭窄ないし閉鎖など。
合併する心疾患は、
これらのどれかひとつないし複数の組み合わせで生じ、それによる血行動態も様々。

・診断
合併する心疾患の診断は心臓超音波検査で可能。
腹部臓器の位置診断は超音波検査、CT、MRIなどにより可能。

・治療
総肺静脈還流異常症で肺静脈閉塞を来しているものや、
肺動脈閉鎖を伴い動脈管開存に依存しているものは、
新生児期早期より手術が必要となる。
長期的に成長可能な状態とするために段階的な(複数回の)手術を要する場合もある。
心室が2つあっても、房室弁の形態や心室中隔欠損の位置などにより分割がむずかしい場合もある。

・治療後経過
病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々になる。
外科的修復を終え、心臓内の短絡やチアノ-ゼのない状態に至れば、
長期的な成長発育が可能。