みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

見守ること 信じること

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この週末は上のお姉ちゃんの卒園式だった。
力は残念ながらその場に出席できなかったけど、
手術を乗り切ってくれたことが、祝福してくれていることになったと思う。

卒園式は、子どもたちの、今までつけてきたいろんな力を見せるためのもの。
他の幼稚園、保育園の卒園式と趣を異にするものだ。
一部は身体表現として、竹馬、まりつき、こま回しなどをみんなの前でみせる。
二部では、今年は「花さき山」(斎藤隆介作)という絵本の、
「じぶんのことよりひとのことを考えることの大事さ」
をコンセプトに、構成詩、歌などが構成されていた。

上のお姉ちゃん、いろんなことを、自分で納得した形にした上でないと人に見せたくない、
負けず嫌いちゃん。
練習しているところや、間違っているところを、親や他の人に見られることをあまり好まない。
また、負けず嫌いのくせに、泣き虫だ。
でも、その分しっかりしているところもある。
準備や目配りがちゃんとしていることは、親としては助かる面も多々。

年長になってからは、泣くことも減ったし、強くなったねーと思っていたが、
卒園式で、出た。

子どもの構成詩で、お友達の素敵なところ、いいところ、をリレー方式で語るところ。
後半終わりがけの順番に回ってきたお姉ちゃん、
途中まで言ったが、ふいに急につまって、とうとう泣き出してしまった。
これまで滞りなく進行してきた流れが中断してしまった。

卒園児の親は全員、子どもに対面して座っている。
サイドには全職員と来賓、
観客席には、祖父母をはじめ親戚などや在園児の父母など、
大勢の皆さんが注目する中。

この保育園では、この状況、誰も打ち切らない。
できるまで見守る。
今までいろんなイベントで、
そんな場面を何度も見てきたが、ここにきて私たちの娘が。
2分、3分、全く泣き止む様子がなく、とうとうクラス担任の先生がそばに行ってくれた。
隣のお友達は、背中をさすりながら、「はじめから言ってみれば?」と言ってくれている。
静かなまま流れていく時間、母は、頑張れ、頑張れ、と心の中で声をかけるだけ。
何度も言おうとしている様子は見えたが、しゃくりあがって言えない、また泣いてしまうの繰り返し。
10分も経っただろうか、
涙声ながら、とうとう、言えた。
父母から拍手が上がった。

母はほっとした。でも拍手はしなかった。だって絶対できると思っとったよ。
夫は小声で、このまま、言えんかと思いよった、どうしようかと思ったよ。と言った。

その後はスムーズに進んでいった。
すぐ次にあった「ともだちはいいもんだ」手話つきの歌、
お姉ちゃん、得意げに完璧にやっていた。
泣いたことを挽回するかのように。

無事卒園式が終わり、いろんなお父さんお母さんたちから、
「お姉ちゃん、ホントよかったよ。言えて、えらかったよ!」
と言ってもらった。
「お姉ちゃんらしかったね。」とも。

あの10分間。
「早く言えばいいのに。」
「もう無理させんでもいいんじゃない?」
と思った人は一人もいなかった。(と思う。)
誰もが、頑張れ、できるよ、と心で念じてくれていた。
多分、あれが30分続いたとしても、待ってくれていたに違いない。
そんな保育園だ。

子どもを見守ること、信じることの大事さを、改めて感じた卒園式だった。
泣いたお姉ちゃんは悔しかったろうけど、
私たちにとっては、ナイスなハプニングだったように思う。まさに、集大成だ。
(当事者としては、時間押して申し訳ない気持ちがあったのも事実。)

子どもを信じて見守ること。
実際は、なかなかできないことだ。
忙しさにかまけて、余裕がなくて、いろんな理由で。

すごい力を持っている、彼ら子どもたちの才能の芽を、
いつのまにか踏んづけてるんだろなあ。大人が。

嫌がるだろうと思いながら、
帰りの車の中でお姉ちゃんに泣いたわけを聞いてみた。
案の定、知らん振りをしていた。
でも、実は言いたいっちゃんね。

夜、お風呂上りにまた聞いてみた。
「ねえ、何であの時泣いたと?」
「えー。」
「言うこと忘れてしまって悔しかったと?」
「ううん、忘れてしまった訳じゃない。」
「そんなら、恥ずかしかったと?」
「ううん、違うと。
あのね、お友達のいいところ、練習で考えとったことを言おうと思っとったけど、
言う時になって、急に、こんな言い方したら、みんな分かりにくいかもしれん、て、
思ってしまったと。
それで、みんなに分かるように言い直そうとしたら、自分がわからんくなって、
それで泣いてしまったと。」

そうか、みんなのことを考えた末の失敗だったんだ。

-この 花さき山 いちめんの花は
みんな こうして さいたんだ
つらいのを しんぼうして
じぶんのことより ひとのことを おもって
なみだを いっぱい ためて しんぼうすると
その やさしさと けなげさが
こうして 花になって さきだすのだ-

♪ひとりはみんなのために みんなはひとりのために♪

まさに「花さき山」「ともだちはいいもんだ」を地で行ったってわけ。

ちゃーんと落ちがあったってわけか。やるわね。お姉ちゃん。