少しして雨が降ってきた。天気予報どおり。
母、昨晩は、大学時の大事なテニスの試合の前日みたいな緊張があった。
夫からは、
「なんか緊張するね。ＢＧＭはドリカムの『嵐が来る』」
という、緊張しとんのかしてないのか、なんとも知れないメールが来ていた。
ちなみに私は、上原ひろみのアルバム『ＸＹＺ』がグルグル。
緊張するーこりゃ今夜は寝られんばい、と思いつつ、相変わらず３秒で意識なくなった。
手術は午後一、１２：３０手術室に搬入予定。
午前中、お世話になった看護師さんが病室のぞいて次々に声かけてくれる。
手術が無事終わると、ここへは戻らず外科病棟に移るからだ。
「リッキー頑張ってね！」「応援してるよ！」「大丈夫よ！」
私は、この一ヶ月滞在した病室を片付けると、やることなくなった。
力は、昨日から今まで見たことないくらい、長時間連続で寝ている。
どうしてだろう？
手術が迫っているとわかって、体力温存するかのように。
今日は身体拭かれても、浣腸されても、少し目を開けただけ。
手術後は、手術跡が残るのでキレイな身体は今日限り。
身体拭いてもらう時に、全身写真を撮る。
そして空手着みたいな手術着に着替え、
足にマジックで名前を大きく書いて準備完了。
夫が午前中仕事してやってきた。
いつもいきなりやって来る友人が、
今日はわざわざ来た、とサンドイッチの差し入れと読み物を持ってきてくれた。
そして力は時間通り連れて行かれた。
やっぱり寝たままだった。頑張れ力～。
私たちは待合室で待つ。約４時間動けないので、長丁場だ。
もっと緊張するかと思ったが、
夫と２人でくだらん話したり、ＷＢＣ韓国戦を携帯でリアルタイムでチェックするなど、
ちょっと逃避的に時間過ぎていった。
ＷＢＣが終わってしばらくしたら、私の父母がやってきた。
野球惜しかったねーと言いつつ。
４人になってさらに力以外の話で盛り上がっていた。
最初の外科手術が終わったら、
外科医が出てきて手術概要をお知らせしてくれると約束してたが、
予定時間過ぎてもなかなか姿を現してくれないので、
ドキドキし始めていた時に、ついに来てくれた。
「無事に終わりました。もう耳鼻科が気管切開を始めています。」
手術の概要を説明してもらいサインした。
お腹を開けてみると、胃と肺と横隔膜が少し癒着しており、
そこをはぐ作業が予定外だったそうだ。
問題なくうまくやれたが、もしかすると不具合が生じる可能性がある、
それは、数日しっかり観察して、対処しますので大丈夫です、とのこと。
はあ、一つクリア。
気管切開は１時間弱、ということだったので、あと少しだ。頑張れ頑張れ。
それからちょうど１時間ほど経ってから、
看護師さんがやってきた。
－力くん、手術終わりました。ＩＣＵに入る直前だけお顔見ることができます。
しばらくすると大名行列のように、手術室からぞろぞろとやってきた。
力はみんなに囲まれた大きなベッドにちょこんと寝ている。
とても血色いい。びっくりした。
あっという間に行ってしまい、
後半執刀の耳鼻科医から説明を受けた。
「力くん、気管自体が思ったより細かったです。
やはり気管切開正解だったと思います。無事に終わりました。大丈夫です。
これから、長いお付き合いになると思います。頑張りましょうね。」
一緒に待っていたじじばば、
「安心したあ。あの力の顔色見れて。あーよかった。よかった。」
騒ぐだけ騒いであっけなく帰っていったという感じ。
まあ、彼らのお陰で気は紛れたな。確かに。
今晩はＩＣＵで観察だ。
看護師に連絡先を伝えて、外科主治医に明日の昼の面談予約を取り、
１８：３０には帰れる状態になった。
思っていたより早かった。ほとんど時間通りだ。よかった。ほっと力抜けた。
お姉ちゃんたちを迎えに行く前に、
ささやかに夫と２人で祝杯をあげるべく、食事をした。
夫は少し飲んだ。夫と２人で食事をするのはいつぶりだろう。
２人で、「おいしい！うまい！」を連発した。
園にお迎えに行くと、いつもはべそをかいている真ん中のお姉ちゃんが、
満面の笑みで迎えた。
帰って、久々にみんなでお風呂に入って大騒ぎした。
寝る時は、上のお姉ちゃんが珍しく、
「お父さんの横でずーっと一緒に寝る！」
と言ってきかなかったが、
私が横でお話をしてあげると、おやすみ、と寝てくれた。
今日は、力が生まれてちょうど６ヶ月の日。
力の新しい始まりの日になればいい。
ずっと降ってた雨は、いつのまにか上がっていた。
