みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

染色体検査(G-banding) 再度

このカテゴリに記事を書くことを、すっかりご無沙汰していた、というか、
トリーチャーコリンズや染色体異常、等を、もう、主に考えないようになって今に至る、といった方が正しい。
 
 
4月に、乳児の際に行った染色体検査(G-banding)を、再度やってみようか、と主治医に相談されて了承した。
 
乳児期の検査の結果は、染色体異常。
だが、力は、正常の染色体も混在している「モザイク」で、
しかも、異常が認められたY染色体に関しては、種を判定されない、「?染色体」という、
いわば玉虫色な結果でもあった。
 
しかし、出生後、実際、力に発現している奇形等を考えれば、
染色体異常に由来するものだったんだ、と、納得させられたところもある。
 
この度、5年経過して検査を再度やることになったのは、
「モザイク」
「?染色体」
という、玉虫部分を、ある程度成長した今、確定できるのではないか、という趣旨だった。
 
染色体検査は、G-banding、というもので、保険医療範囲内でできるものだ。
血液で検査するが、結果が分かるまでは一月ほどかかる。
結局、入院時期に聞くことになった。
 
結果が出ているはずなので話が聞きたい、と主治医にリクエストしていたが、
病棟の担当医が代わって結果を話してくれることになった。
染色体検査のような、繊細なことを、なぜ主治医が話してくれないのだ?と思いきや、
今回の検体の全染色体が「正常」であった、という、逆の意味で私にとっては驚愕の結果であった。
あまりにも私の反応が妙なので、担当医、え?なんで?という顔をしていたほど。
 
「正常」で喜ぶべきところだが、なんというか、複雑な心境になっていた。
今までの力のいろいろは、染色体異常からくるものだと、全てにおいて、結論付けていたところがあったからだ。
 
それにしても、5年前と今で、異常から正常になることなんて、あるのだろうか?
 
退院前日になって、主治医と少し長く話すことができた。(実は回復期のタイミングを待っていてくれたらしい)
 
まずは、再検査意図としては、染色体異常を確定できる部分があれば、確定して、
本当に突然変異なのか、遺伝かもしれないのか、それなら力以外の子どもたちに因子の可能性はあるのか、
ということだったらしい。
 
力もだが、おねえたちにも、その因子がある可能性があるのなら、
彼らの子ども世代以降にも、影響があるかもしれない、ということ。
知っておいた方がいいのでは、という主治医の判断である。
 
妊娠した際の羊水検査と、状況は似ているかもしれない。
知ることは、全ていいこと、とは、いえない。倫理的に、とても難しい部分だと思う。
だから、
もし、遺伝が関係する可能性がある、という結果がでて、それを知ってしまえば、
親として、非常に難しい状況に置かれる、ということであった。
 
正常という結果は、そういう意味では、本当にほっとした。
 
そもそも、染色体検査で、力のように、結果が変わる、ということは、たくさんはないという。それはそうだろう。
それなら、最初は間違いなのか、というと、そうとも言い切れないらしい。
 
主治医は素人の私にもわかるように、こんな話をたとえてくれた。
 
この検査は、宇宙から地球の、日本をみて、例えば北海道があるかないかを確かめる程度の精度。
でも、北海道に札幌がどのようにあるかどうかまでは、わからない。と。
 
なるほど、なんとなく、イメージできた。
 
また、染色体については、まだまだ未知の世界で、
このたとえのように、北海道の札幌を調べるのなら、大学研究レベルで、高額の自己負担での検査になる、
とのことだった。
 
染色体検査をすることによって、力が大きく治癒するのならば、お金のことは二の次になるかもしれない。
でも、調べて原因をやや特定できるかもしれない、というレベルであるのなら、
治験などではない限り、なかなかトライする、という状況にはならないだろうし、実際うちもそうだ。
 
トリーチャーコリンズ症候群についても、
確定するためには、大学研究レベルでの染色体検査が必要であるらしく、
そうかもしれないし違うかもしれない、というのが、実際のところらしい。
 
でも、もう、何かのきっかけがなければ、詳細を調べることはないだろう。
これからも、力に何か起これば対処していくしかないし、
実際、そうして今までやってきた中で、~だから、ということは、あまり重要ではなかった。
逆に、染色体異常だからこうなった、だからしょうがない、どうしようもなかった、
などと、医療サイドから安直に結び付けられがちだったのは、マイナスなところだったかも、とも思う。
 
人間の体は、まだまだ未知の世界である。
染色体をさぐること自体、やや神の領域に近いのではないかとも思う。
 
先日の入院では頻繁に採血をしたのだが、
力はなかなか採血しにくい体質だし、状態も悪かったので、医師たちは大変苦労をしていた。
「将来、採血しなくても、身体の状態がわかるようになったりしないのかなあ?全身スキャンとかで。」
と冗談ではあったが、まさに、医師の本音とも言える言葉が印象的だったが、
もし、本当にそうなると、もう、人間の医師は不要、ってな状態になるかもしないってこと。
 
手塚治の漫画に、
近未来、全オートメーションの病院があり、
機械が医師で、全患者を効率的に正確に診ているという内容の話があった。
診察はほとんど間違いないものでも、患者の満足度は全然高くない。人間の医師を呼んでくれとみんな言う。
正しいか正しくないかは、大事なことであるが、もっと大事なのは他にある。
今回の検査結果で、倫理や医療の領域のことを、様々考えさせれた。
でも、医療の分野だけではなく、何にせよ、どんな場面でも、どんな状況でも、
対話やコミュニケーションが最も重要であるというのは、間違いなさそうだ。
 
忙しいであろう主治医と話がたくさんできて納得もしたし、
私は、主治医を始め、いろいろな方々や事柄に、本当に感謝の念を強くしたのであった。
力の命を助けてくれて、なんとか育つことができるようにしてくれていること、本当にありがとうございます。
 
そう思えたり、考える機会を得たのは、力を授かったおかげであるのは言うまでもないのだ。改めて。
 
 
それにしても、このブログを立ち上げた理由の、まずは、な染色体異常、については、前提崩れてしまった形。
それでも、これが、力ですから!