みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

23.「プロに聞け」を忘れずに

イメージ 1

「みんなのチカラに」連載第23回目が掲載されました。
http://www.nishinippon.co.jp/medical/2007/03/post_291.php

最初の手術からちょうど一年が経ちました。
こうしてリハビリを進められているなんて、
本当にありがたいことです。

今のところ、すごくすごくゆっくりですが、
どうにかリハビリは進めてもらっています。
連載に書いている通り、
プロはすごい!
もう、すごいなんてもんじゃないと思います。
だからプロなんだろうけど。

対して私といえば、
特別に特別に、と頭でっかちになっていました。
意識のバリアは、無意識のうちに、というところやなあ、
と、ものすごく落ち込んだ数日間。

とはいえ、
うれしそうな力を見ると、
頑張ってリハビリ通わなきゃ!と思わされます。

先輩父ちゃん母ちゃんたちも、
プロの皆さんも、
やっぱり、経験に勝るものはなし。
これからも、どんどん頼らせてもらいたいと思っています。

頑張るぞう~!!!


みんなのチカラに<23>「プロに聞け」を忘れずに

 力(ちから)は心身ともに成長がゆっくりだ。出生時低体重、染色体異常がある。母子手帳に記載されている成長の目安は参考にならず、ほとんど開くことは無い。

 力の育児はたんの吸引や注入、処置、リスクに対する緊張感はあるものの、お姉ちゃんたちと基本的には違わない。でも、寝返りやはいはいなどの運動機能や視覚、言語などを含めた精神の発達過程には何らかの介助が要りそうだ。気管切開や難聴、嚥(えん)下(げ)障害などがある力にとって、いつ、何が必要なのか、どんなかかわり方をすべきなのかは未知の世界だった。

 昨年8月末の退院後、1カ月ほどは順調だったが、10月から11月にかけて高熱、下痢による脱水、原因不明のひきつけらしき症状などで三度も入院した。寒い冬の前にこれではどうなることやらと思ったが、晩秋辺りから落ち着き、主治医の勧めで療育センターに通うことになった。

 療育センターとは専門相談員の面談を経て医師の診療を受け、それらの結果と保護者の要望に応じて、通園または外来でリハビリをしたり、いろんな活動をする場。特別な保育園のようなところだ。

 まずはスタッフと力の双方の準備、様子見のお試しグループに入った。力は見学に行った時点から場に慣れ、不快な様子は見せなかったので安心して初回を迎えられた。力ともう1人の男の子に対してスタッフは5人。それぞれの専門知識があるプロだ。

 「最初に自己紹介をしてお歌を歌いましょう」。保育士さんの一言で始まった45分間の活動は乾布摩擦や、親子でできるちょっとした遊びを教えてくれながらの、楽しく遊ぶ時間だった。

 歌ったり、バスタオルをハンモックにして、乗せてぶらんぶらんと揺らしたり。ただこれだけなのに、力のうれしそうなこと! こんなに喜んでいるしぐさは初めてだ。スタッフの雰囲気作りのたまものなんだろうなあと、プロならではの技に感心した。

 私も喜んでいる力を見ることができてうれしかった。でも、その晩、自己嫌悪に陥った。乾布摩擦もお遊びも、お姉ちゃんたちが通っていた保育園で教えてもらったことばかり。新しいことは1つもなかった。知っていたのに力には一度もやってあげたことがなかったんだ。

 お姉ちゃんたちの乳児期から何年もたっている。けれど思い出してもよかったのよ。力に「特別に」何をすべきかばかりが頭にあって、全く結び付いていなかった。

 入院が続いた後でもあり、療育センターに行くことにちょっと腰が引けていた。そんな時、先輩母ちゃんが「早めに行っておいで。全然違うから」と背中を押してくれた。本当に行ってよかった。

 イレギュラーなことが多くても力の育児は「道なき道」ではない。心強い先輩たちや専門家がちゃんと導いてくれる。これからも「プロに聞け!」を忘れずにいこう。