みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

どっきどきのいちねんせい

今日から上のお姉ちゃんの小学校は給食が始まる。
本格的な学校生活の幕開けと言っていいだろう。

朝、集団登校。集合場所にぎりぎりに間にあったお姉ちゃん。
列に並んでいたが、
ふいに、はっとした顔をしたと思ったら、私のところへ走ってきて、
「おかあさあん、名札忘れたあああ。」と大泣き。
もう出発時間だったので、引率のお母さんに一言言って、
ダッシュで家に取りに行った。

急いで集合場所へ戻ったが、みんな既に出発した後。
お姉ちゃんは大泣きで、母もどうしようかと思った。
小走りで追いかけるも、集団ははるかかなたに行ってしまった後。

ここで、母、どうするべきか。
一緒に登校してあげるか、一人で行かせるか。
下のお姉ちゃんがいるし、一緒に行けばかなり時間もかかるぞ。
第一、自分が忘れたのに、母と一緒に行けたら、
忘れ物したのを反省材料にできんかもしれんやんか。

母は思い立って、
同じマンションから登校していた上級生のお兄ちゃん達2人連れに声をかけた。
「ねえ、お兄ちゃん達、この子一年生やけん、連れて行ってあげて!よろしく!」

お兄ちゃん達、うん、とうなずいたが、一緒に連れて行こうという素振りないまま歩き出した。
お姉ちゃんの背中を押して、
「さあ、お兄ちゃん達と一緒に行きなさい!」
お姉ちゃんは半泣き状態で、つかず離れずで歩き出した。

送り出して、お姉ちゃんが小さくなるまで見送った。
ずっと遠くまで行って、なぜか、ふいとお姉ちゃん、こちらを振り返った。
母は大きくばいばい、と手を振った。
すると、ばいばい、と手を振り返して、前を見て歩いていった。

それから、下のお姉ちゃんと保育園にむかった。
下のお姉ちゃんが言った、
「お姉ちゃん、一人で大丈夫かなあ?」
「大丈夫。お姉ちゃんは、もう一人で、大丈夫。」
母、自分に言い聞かせるように言った。

心配だった。
お願いしたお兄ちゃん達も心もとなかったし、
泣いてたしなあ。
そのままはぐれて、学校にたどり着かなかったらどうしよう。
あの時、一緒についていってやればよかった、って思うことになったら。。。

まさか電話がかかってくるようなことがあるはずない、
と思いながら、携帯をずっと握り締めていた。
8時半になって、学校に電話したい衝動があったが抑えた。

夕方、母、病院から17時過ぎに帰宅したので、
お姉ちゃんが帰ってくるのを自宅で待っていた。
なかなか帰ってこない。5分、10分過ぎてゆく。
・・・まさか、最初から行ってない、とかないやろね。

すると、玄関がガチャガチャ。
-帰ってきた!

「あ、お母さん、おったとー?ただいま。」
「おったよ。おかえり。今日学校どうやった?」
「あのね、今日ね、シールつけてもらった!」
「あら、それはよかったねー。」

母は、何でもない振りをして受け答えした。
ホントは、今日一日、めちゃ緊張したんだぞ。

♪どっきどきどん!いちねんせい~♪って親の方やな。