おねえNは部活も頑張っており、所属している部の練習ボリュームは、
校内の中でもなかなかハードな方らしい。とにかく休みが少なく、めちゃくちゃ走らされてる。
だが、甲斐あって、小学生の時よりも随分たくましくなった。
今頑張って体力を作っておくことは、これから先にとても役に立つこと間違いなし。
まあ、それはいいとして。
私たちが中学生の時代は、部活に保護者が関わってくるのは、
試合などを保護者がみたい時だけ勝手に来たら、というものだった。
ちなみに、うちの父母は、よく試合をみに来てくれていた。
ただし、試合会場で親子で言葉を交わすことはほぼ皆無。皆そんな感じだった。
友だちの前で親と話すなんて超だせえし、てところ。
今は、どの部活にも保護者の会があり、試合等の送迎を始め、
活動が大変なところは、顧問の先生のお弁当づくりやなんやかんや、様々なお世話があるらしい。
今Nが所属している部活は、顧問の先生のおかげで、
一番大きな保護者の仕事は、試合会場への送迎くらい。だから、楽なほうなのだと思う。
でもいくら楽でも、力がいるわが家の事情では、なかなか自由がきかず、
周りの方々にたくさん助けてもらっているのが実情。強制されることもなく、本当にありがたいことだ。
申し訳ないので可能な限り、車出しができる時には手を挙げてる。週末の早朝の送りが一番協力しやすい。
ある日、うちは早朝送りだった。
同市内の学校まで、とはいえ、かなり遠方、学校からは約1時間の道のり。
おねえNが助手席に座り、2人の子を乗せた。
「おねがいします!」
とさわやかに乗車してきたが、
しばらくすると、
「パチン!パチン!」
と、妙な音が聞こえる。
ちらと鏡でのぞくと、二人できゃはは!とか言いながら爪を切ってるではないか!
げげげ。なんじゃそりゃ。それはダメでしょう!
という私の注意モードの雰囲気を察して、横に乗ってたNは身体を固くした。
それに気付いた私は、口を開くのをやめた。
それからずーっと到着まで、どうしたもんかと頭を悩ましていた。
他人の車の乗っておいて、爪とか切らんやろ?
それにしても全く悪気はなさそうだ。ここで注意しとかんと、また他の車でも平気で切るぞ、この子たち。
とうとう到着。
「ありがとうございました!」
と笑顔で降りていった二人。
Nはなんとも微妙な顔で、ばいばーい、と私に手を振った。
N帰宅。
「あのさ、おかーさんの言いたいこと、わかるよね?あれって、注意したら、Nが困ったと?」
と言うと、
「うん、かなり困った。だけん、何も言わんでくれて良かった。」
「でもさ、あれはないやろ?爪切ったりできんよね。他人の車は他人のうちと同じやん?」
「うん、Nは絶対やらんし。」
うーん。
なんとも悩ましいことだ。
彼女らの悪気ないところがまさに厄介。
送迎は、タクシーじゃないのよ!
いつもなら速効で注意してる。結構がつんと言ってると思う。
がつんと言っても多分、彼女らにはあんまり響かなかったのでは、とも思う。
でもNのあの顔はねえ。どうしたらよかったのかなあ。
いまだ正解がわからずにいる私だ。