みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

夢がかなう場所/小さなたね

先日、
「地域生活ケアセンター小さなたね」
を見学しに行った。
 
その日は夫が仕事で行くことになっていたのだが、
力はその日、とても体調良好だったので、来月に見学を予定していたのだが、急きょ、
登校した後、私も合流させてもらった。
大学の先生と、学生さんで、将来特別支援学校の教師を目指している、先生の卵さんたちの見学会。
 
「小さなたね」は、
力のような、医療ケアが必要な障害がある子も含めて、日中一時支援を行っている小規模施設だ。
開所者さんは、医療ケアが要る娘さんがいて、
私たちからすれば、まさに、少し先を歩いている先輩父さん母さんである。
 
イメージ 1その日は雪混じりのとても寒い日だったのに、
民家を改造したその施設に一歩入った時の印象は、「明るい!」
 
利用者さんは、娘さんを含め2名。一人はもう成人のお兄さん。
大学の先生や生徒さんたちは、開設者さんからのお話し聞いたり、
その後は、利用者のお二人に話しかけたり。
 
ベッドは2床だが、受け入れは6名で運営しているとのこと。
このような小規模施設で、
医療ケア有の日中一時支援を行っている場所を初めてみたが、
明るさと温かさに本当に感心。いいなあと思った。
 
「病気や障がいが重くても地域で暮らしたい」、という願いを実現するために、がコンセプトの施設。
開所時はいろいろと御苦労もあったそうだが、少しずつうまくいくようになってきたそうだ。
お話し聞いていて、何より、
「こんな施設を作りたかったんです。夢がかなったんです!」
と言われる運営者さんたちのお顔はとても素敵で、
そっか、だから、この場所が明るくて温かいんだ、とわかったのだった。
 
見学に来ていた学生さんたちは、当然ながらまだ若くてぴちぴちな皆さん。
こんな施設初めて知りました、
と言われていたが、当事者でも、知らない人がほとんどだ。
楽しそうに利用者さんに接する姿をみると、
「卵さんたち!期待してます!がんばってね!!」と大きな声でエールを送りたくなった。(実際言った)
 
 
こんな施設で受けられるサービスを「レスパイト」という。
休みない介護者を、緊急時でなくとも、いったん休憩させる、という意味合いの言葉。
この言葉自体、認知度が低い。
福祉医療に関わる専門職の方々であっても、
この意味と必要性を、ちゃんとわかっている率も、意外なことに低い。

 
力は無事に就学し、何とかかんとか学校生活になじみつつ、
ずいぶんのんきになったよなあと、思えるほどの生活を、今は送れている。ありがたいことだ。
 
が、0~1歳児の長い入院生活終わって退院した後から、ほんの最近まで、
医療ケアが必要な、いわゆる重度の障害がある子どもと自宅で暮らすことは、
家族一緒に過ごせる何物にも替え難い幸せの裏側に、
24時間365日終わりなきケアのシビアな日々があるのも現実だ。
 
少しでも気を抜けば、すぐにでも小さな命が手からすり抜けていくかもしれない、との重圧と闘う日々。
かといって、大人がずっと四六時中戦闘態勢でいれば、家の中はぎすぎすして楽し安らげるところではなくなる。
普通に「特別」な生活を送る、というのは、本当に難しい。
実際、私は四六時中戦闘態勢だった。
ぱっと見はそうは見えなかったのかもしれないが、
内情は、目は血走って髪はぼさぼさ、簡単に倒れぬよう大リーグボール養成ギブスみたいなのを着用して、
いつでも戦えるよう、背中に刀を何本も背負い立っている、という前線の兵士みたいだった。(今もやや)

特に、力が1歳児の時から夫が単身赴任でいなくなり、兄弟児もいる。じいさんばあさんもやや遠方居住。
自分が緊急時の心配がリアルに、必要性をひしひしと感じていた力が2歳児位の時に、
力を預けられるような施設を探して、見学したことがある。
 
探してみると、力のような医療ケアが要る小児が利用できる施設は、本当に限られていることがわかった。
うちからは当時、2施設のみ。
最初に行った大きな病院では、見学後、施設の様子にあまりにもショックを受けて、
私、絶対に倒れられないんだ、命が無くなったとしても、目をあけて立ってケアし続けなきゃ、とまで思った。
どこの施設も、利用するための受診と、何度かの体験入所などをしなければならなかったのだが、
それもせずに、できずに、
なんとか、既存の様々なサービスを使わせてもらってやりくりして、
たくさんの心ある方々のご協力をいただいて、今に至る。
今、家族皆元気でいられるのは、たまたま、どうにかなっただけなのだ。
 
うちは少しだけ、超シビア状況は脱したが、
今から、障害があるベビーちゃんを迎え入れるご家庭のことは、とても心配だ。
心身ともに少しだけでも休めるところをいくつか確保しておいてほしいと思う。
また、
これから先、私たちが老いていく際に、やっぱり力のことをお願いできるところがほしい。
こんな施設があることは、本当に心のよりどころとなり、支えとなる。
そして、そこが、力にとって、とても楽しく心安らげる場所であれば、本当にありがたい。
 
小さなたね、は、そんな場所の理想形に歩を進めた施設の一つ。
 
わが家から少し遠いところにあるので、気軽に利用する、という施設にはならないかもだが、
こんな施設が、少しずつ増えていけばいいなあと、強く思う。