みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

半固形化注入導入から1年超~就学

2011年3月末から本格的に導入した「半固形化栄養剤注入」。
既に導入から1年超。
その間、療育施設を卒園、特別支援学校に入学。大イベントを経た。
現時点では、液体を注入していたのは、いつまでだったっけ?と思えるほど平常になっている。
 
 
昨年秋(2011年9月)以降の経過ほか、記録。
 
[全回半固形栄養剤注入へ]
昨年秋(2011年9月/6歳)より全回(1日5回)半固形栄養剤に移行した。
その後、体調不良や入院時には、液体の注入にイレギュラーに変更することはあるが、
通常は、半固形物注入が基本である。
 
[半固形化栄養剤(自宅作成分)についてのトラブル]
半固形栄養剤はラコールと粉末寒天で作成している。
寒天溶液を熱し、撹拌しながらラコールを投入し、よく混ぜて冷ます。
完全に固まらないうちにシリンジに充填する。
この作業の際に、
・寒天溶液がよく熱されないうちにラコールを投入した
・撹拌が不足している、
・(特に冬季)冷め方(固まり方)が鍋の場所によってばらつきがある
等の不備ある場合、
シリンジ充填時に均一な寒天状にならず、一部ダマになった寒天が混入、
注入時に胃ろうボタンに詰まり、注入不能になる場面が何度かあった。
対策として、一旦注入を中止し、別の注射器にて、空気でフラッシュすることで、解消した。
 
[就学前準備]
導入翌年度に、特別支援学校に入学予定。
小児分野ではまだまだ症例が少ない半固形化栄養剤注入を、
学校側が、
医療ケア代行措置(学校看護師が保護者の代わりにケア等を行うこと)可能、
と受け入れてくれるかどうかが、学校を決めるにあたっての最大の要確認事項であった。
外科主治医(当時)は、療育施設と同様、液体の注入と何ら変わらず問題ないはずだ、という見解。
 
居所からは二つの学校を選択できた。
両校とも見学し、食事について尋ねたところ、
一方の学校では既に半固形注入を実施している生徒がいる、とのこと。
食事時間に様子を見学させてもらった。
 
自宅で作った寒天状の経管栄養剤をタッパーに入れて持ち込み、
学校看護師がシリンジで吸引して、それを注入する、というやりかた。
(ちなみに、うちで作っている半固形物よりもかなり粘度が低かった。)
こちらの学校では、手技確認できれば、受け入れ可能、との回答を得た。
 
もう一方の学校では、半固形化栄養剤注入自体の実績が無く、
また、自宅から作った何かを持ち込み、給食時他に供することは衛生面で不可。
どうしても持ち込みしなければならない事情がある場合、保護者の責任の下、保護者が対応する、
という基本原則。イメージ 1
 
これを受け、学校側の担当者(教頭)と年末にかけてやりとりし、
常温保存可能のパウチ食(濃厚流動食・ゼリー状流動食)を提案した。
外科主治医から指定された、市販されている半固形流動食実物を提示し、
1回1個分を使い切りであることを条件に、受け入れられそうだ、との回答を得た。
 
注入他、総合的に検討した結果、後者の学校に入学することに決めた。
 
療育施設では、
自宅で作成した、シリンジに充填したラコール寒天を持ち込んだもので対応してもらっていたが、
就学に当たって、何日か連続してパウチ食での注入を試みては?
と保育士、園の看護師から提案され、約1週間ほど、園での昼食時のみパウチ食を利用した。
問題ないことを確認した。
 
[パウチ食(濃厚流動食・ゼリー状流動食)について]
自宅では、パウチ食を外出時などで既に活用していた。
シリンジ充填ラコールと比べて、パウチ食の利点は以下。
 
・作らなくてよい
・常温保存可能のため、温度管理がシビアでなく、衛生上の心配が少ない。
・かさが小さく持ち運びに便利。
 
デメリットとしては、
・費用がかさむ(画像のパウチ食で約230円程度。他の流動食の相場も、ほぼ1キロカロリーが1円換算)
・どこででも購入できない。(通販購入)
 
大変便利だが、基本、ほぼ安売り無し、定価での通販購入のため、イメージ 2
全食をパウチ食にすることは、一般家庭にとっては経済的に現実的ではない。
 
しかし、もし外出時に急に必要になった場合は、代替汎用品として、
 
カロリーメイトゼリー(アップル味)
 
がいいのでは、と外科主治医より。緊急時は、活用できそうだ。
ちなみに、これは、他のゼリー状の栄養補助食品の中でも、最も食べやすい味だと個人的に思う。
 
[就学後]
事前の打ち合わせや、今までの実績より、パウチ食での半固形注入を、
校内の医療ケアとして受け入れてもらえることになった。
 
学校看護師は全員、今まで例が無かったため学校では経験はないものの、
半固形化栄養剤注入についても理解があり、伝達にも手技自体にも全く問題なかった。
 
[現時点でのまとめ]
半固形化注入をうまく導入でき、また、学校施設でも受け入れられて、ひとまずほっとしている。
これも、主治医はじめ、外科主治医の理解と指導のもと、療育施設の先生方や看護師さん、
その他、いろんな方々に協力していただいたからである。感謝したい。
 
今まで大きな問題は発生していない。
本人にとって、半固形化注入を導入したことは心身ともにメリットが大きく、
また、看護介護者にとっても、大きなメリットがあった。
 
以降も引き続き、半固形化注入を継続する予定だが、
半固形化注入はそもそも、普通食をペースト状にしたものを注入するための過程である、
と定義してある論文もあることから、
力に関しても可能であれば、
経管栄養剤ではなく、家族と同じ食べ物を食べられるような状況を、広く見通しながら、
その時々について、彼にとって最も良いと思われる選択を、慎重に見極めて進めたいと考えている。
 
なお、力については、現時点ではうまくいっているが、
特に小児に関しては、半固形化注入がうまく導入できるか否かは、個体差がかなり大きいようである。
症例が少ないとはいえ、周囲には、うまくいかずに液体注入に戻した方も何人かおられる。
実際、力も、導入時は原因不明の嘔吐下痢で、入院させてしまった。
 
半固形化注入を検討中の、特に小児の保護者にはぜひ、
気軽にトライすることなく、主治医と十分に検討の上、
体調をしっかり管理しながらの導入を、強く勧めたい。