みんなのチカラに~ぼくが力になれること

産まれてすぐに救急搬送されたチカラは、 5万人に1人とされるトリーチャーコリンズ症候群と診断された。 箇条書きでも1枚に収まらないほどの手術や入院を繰り返した2005年からの10年。 これからどんなことが待ち受けているのか。 もう、チカラも家族もどんとこいの力が備わりつつある。はず。

ペースト食への移行と半固形栄養剤の登場

半固形化した栄養剤(ラコール)の注入に移行し始めて丸3年経った。
かかりつけの外科医の意向や、医療的トレンドもあり、
半年ほど前から徐々にペースト食注入へ移行していき、
現在、ペースト食注入が、食事全体の半分以上を占めるようになった。

半固形化栄養剤を注入することで、便性が向上し、あわせて体調も安定した。
また、介護負担もぐっと減った。
力に関しては、半固形化栄養剤注入はメリットばかりでデメリットがほぼ無し、と言っていい経過をたどった。
本当にありがたいことだ。

この、うまくいっている半固形化栄養剤から、さらにペースト食に移行するにあたって、
少し躊躇した部分もあったのだが、勇気を持って一歩踏み出してみると、
半固形化栄養剤よりも、現時点では、ずっといい傾向がみられている。


体調はさらによくなり、波があっても、入院する程の体調低下に及ばず。
また、顔色や肌など、表出する部分が、明らかに変わってきた。
栄養剤は、人間に必要な栄養素を効率的に摂取できるよう、研究されてできあがったものだろうが、
それでも素人が作る食べ物にもかなわない、ということなのかもしれない。

また、普通食を摂取していることにより、
胃と小腸の手術をしてからずっと、
常備薬として欠かせなかった胃腸薬を、とうとう減らすことができるようになった。
食品によって、補える、ということだ。

力にとっていいことに加えて、
介護者(私)にとっても、介護負担が減る、以外にいいことがあった。

力が経口摂取が難しくなって、
力だけが私たちと違う人工物の食事(ラコール等)がメインになっていることに、
いつもいつも違和感を感じていた。

だが、ペースト食なら、私たちと一緒の食事だ。
ベビーに離乳食を作るように、なんだかんだと組み合わせを考えながらの、まさに、「食事」。
もちろん、少々手間はかかるのだが、
一緒のものを食べている、ということは、家族として、情緒的な部分ではあるが、とてもうれしいこと。
それで彼が元気になるのなら、なおのこと、甲斐がある。

ペーストの注入についてのテクニック的な部分は、ペーストの粘度だ。
ドロドロだと注入時の管を通りにくく、胃ろうに詰まったりする。
トロトロ過ぎると、水分が多すぎて、摂取カロリーが減る。また、嘔吐を誘発しやすい。

この粘度を、医師の指導のもと、かかりつけ病院の栄養士さんと確認した。
市販のプレーンヨーグルト位のかたさでいい、ときいて、こんなに緩くていいのか、と思ったが、
それを基準に、自宅では、注入時の管を負担なく通過する程度ならいいだろうと、まあざっくり構えている。
食品によって、ペースト食の出来上がり方も異なることもある。

ペースト食を導入するにあたって、
当初、こわごわ、ということもあって、
兄弟児が乳児時に気をつけていた、段取り、を踏んで始めた。
植物性のものから始めて、動物性のものへ、
糖分控え目に、酸味過度になり過ぎぬよう、
油分は最後、
等々教科書的に。

基本的には家族の食事を作る過程の中で、
上記を気にしながら、ある時点で、力の分だけ取り分けてペースト化していた。

すると、私たちが摂っているよりも必然的に摂取カロリー少なめのものになる。
対して、力の胃の容量キャパはそれなりなので、注入総量は変えられない。

容量でカロリーが計算できる経管栄養剤とは違い、ペースト食は、内容物によって同量のカロリーは異なる。
最初はいわゆるダイエット食ペーストなので、
総量の1割程度ペースト食に置き換えても、そう変化はなかったが、
3割以上置き換えると、少々体重の増えが小さくなってきた。
摂取カロリーが減っていると考えられた。

担当医に相談してみると、カロリー摂取対策として、
マヨネーズ味にする、とか、ケーキなどの油脂分多の食品を注入してみている家庭もある、ときいた。

それだと確かにカロリーは稼げるだろう。
が、今までの我が家での子どもの食事の方針としては、少々受け容れ難い。

それはそれで最終手段にすることにして、
まずは、ダイエット食状態をやめ、力の食事も私たちの食事と全く同じものにすることにした。
生もの以外は除去無し。揚げ物の衣もあり。

それで一月様子を見てみると、また体重の増えが戻ってきた。便性も変化無し。
そう、力はもう乳児ではない。私たちが普通に摂る同じ食事でいいのだ。
マヨラーにならずに済んだ。


ペースト食は、様々、いいことが多いのだが、
今までの、半固形化栄養剤の注入も継続している。
というのは、
登校している学校では、給食のペースト注入に対応していない、ということがある。
また、
清潔な状態で持運びでき、取り扱いが便利なパウチ状の半固形状の栄養食品は、
外出時や、ペーストを作る時間や気力がない時など、とても便利に利用できるからだ。

ただ、このパウチ状の半固形栄養は、流動食として食品に分類され、
おおよそ1キロカロリー10円程度の金額で市販されており、我が家も適宜購入している。
力の食事に換算すれば、一回分はパウチ一つ分約250円。
もし全部パウチ食にするとすると、一日約1,250円かかる。
一般家庭の我が家にとってはなかなか厳しい負担だ。

ということで、自宅で、ペースト食以外の食事としては、
医薬品として処方される栄養剤を寒天で加工して注入していたのだが、
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このほど、とうとう、製薬会社より、
医薬品としての半固形栄養剤が発売された。
「経腸栄養剤ラコールR NF配合経腸用半固形剤






訪問看護師さんから情報を得て、かかりつけの外科医に話してみたところ、
つい最近、かかりつけの病院で採用されることが決定し、来月から処方開始になった、
とのうれしい報。

まだ使っていないため、評価はできないが、
まずは、医薬品としての半固形栄養剤の登場を、喜びたい。



この半固形栄養剤のメリットとして書かれていた文言の中に、介護負担を減らす、とあったが、
ここにも、ここ最近の大きな潮流、自宅介護、への移行を、ひしひしと感じた。

我が家のような、障害がある家族がいる家庭だけではなく、
高齢者の介護者、またその予備軍の方々にも、
決して無関係な話ではない、この半固形栄養剤の登場なのだろう。
将来の少々の不安を感じるが、
それぞれがよりよく過ごせるよう、今よりさらに様々を前に進めていけるよう、考えていきたいと思う。